真一郎と幼馴染 | ナノ

キーリングホルダーの本音(マイキー視点)

シンイチローのお店が休みだった日の夜、シンイチローは嬉しそうに真新しいスニーカーを眺めていた。


「真ニィ、それ買ってきたの?」


居間でシンイチローが鼻歌歌いながら眺めていたら、そりゃエマも気になるよな。後ろから覗き込むように、まじまじとスニーカーを見つめて尋ねてる。シンイチローにしては珍しい、割とメジャーなブランドのスニーカーだ。珍しいってシンイチローがそういうものをあまり履いたり持ってるイメージがない。別にスニーカーを履かないわけじゃなく、むしろスニーカーばっかんだけど、大手ブランドのスニーカーを持ってることが珍しい。大体、使えればいいって言っていて買うことの方が多いし、わざわざ鼻歌歌ってまで眺めているんだから、多分値段もそこそこするんだろうな。


「おう、今日、美憂と買い物行ってきた時にな」
「美憂とお出かけしたの!?」


「良いなぁ…ウチも一緒に買い物行きたかった」とエマは面白くなさそうに呟いた。美憂って言ったら、シンイチローの幼馴染でちょいちょいエマと一緒にいるところとかシンイチローといるところとかを見かけたりする。それぐらいの認識だけど、実際話を聞いてれば割と二人はそれぞれ会ったりしているらしい。エマは何かと美憂に聞いてみよう、とか、電話してくる!って言って家電を使って話したりすることもあるし、シンイチローは美憂たちと呑んでくるとか出かけてきたとか言ったり。たまに美憂からって言ってお菓子をくれたりもしてたな。






暇だなぁ〜、ケンチンも場地もいねーし、宛てもなくフラフラしていたら目に入ってきたのはシンイチローの店。暇だし、シンイチローの相手でもするかってことで店に入ったら、バチっと目が合って「帰れ」って言われたんだけど。


「お客さんに言うセリフじゃねーだろ、オニイチャン」
「客じゃねぇだろうが、邪魔しに来んな」


作業着を着たイザナに。
なんだ、今日はイザナがいる日だったのか。まあ、関係ないけど、シンイチローの店だし。イザナにすっげぇガン飛ばされてるのは気のせいだ、気のせい。そう言うことにして店ん中入って適当にバイク眺めてたら、ジャラジャラって歩くたびに揺れているであろう金属の何かの音を立てながら、やっとこさシンイチローが奥からお出ましだ。


「なんだ、マンジローか。どうした?」
「暇だったから、遊びに来たんだけど、イザナに帰れって言われたところ」
「お前ら、兄弟なんだからもっと仲良くしろ〜?」
「フンッ」


シンイチローも俺を見るなりガッカリするとか、ひどくね?客にそんな態度取るのか?まぁ、俺は客じゃねーけどさ。聞かれたら今さっきあったこと、そっくりそのまま伝えたらシンイチローも呆れ顔。イザナの奴にも言えるけど、毎回そのセリフ言うよな、飽きねぇのかなって思っちまう。ふと、シンイチローの足元を見たらいつものボロッボロになったスニーカー。確か家出る時、履いてたよな?俺の見間違い?


「あー、あれ良いヤツだから仕事中に履くの勿体無くてよ…、作業でオイルとかで汚しそうだし作業の時はこれ履いてるんだわ」


って思ってたら、シンイチローが俺の視線に気づいて困ったように笑ってた。だから、俺はふーんって返しながら、ふと視界に入ったのはシンイチローの腰のところ。作業つなぎの上半身部分は腰で結いているのはいつものスタイルだけど、その下に多分ベルトをしているっぽい。そこに引っ掛けられた鍵の束。よく見れば家の鍵とかもついているけど、気になったのはそっちじゃない。


「シンイチロー、そんなん持ってたっけ」


鍵を束ねているものが気になった。ベルトにぶら下げてるのは革っぽいやつにリングがいくつかぶら下がってて、そこに鍵がついている感じ。鍵をいくつも持ってるのは知ってるけど、シンイチローの腰についてるその革っぽいのがシンイチローに似合わずちょっと小洒落た感があって妙に浮いていた。


「ばっ、マイキー…ッ」


だから、思ったこと聞いただけなのに、いちいち突っかかってくるイザナもそろそろ止めればいいのにって思ったけどさ。この時ばっかりはイザナの言葉を聞くべきだったと思う。俺が尋ねた瞬間、シンイチローは俺の視線の先にあるのが鍵の束のソレだと言うことに気づくなり、びっくりするぐらい顔をヘラってさせた。


「え、キモ」
「キモいって言うなよ、仕方ねぇだろ。美憂が俺にくれたんだからよ〜、嬉しくて嬉しくて」


美憂は知ってんのかな。シンイチローがこんなにデレデレな顔すんのとか。知ってるなら美憂は今頃シンイチローと一緒にいねぇか。シンイチローよく隠せてるなって感心するわ。イザナが言ってた意味は理解した。シンイチローはこの鍵のヤツについて触れれば一気に気持ち悪くなると言うこと。この調子だと、事ある事にニヤけてそうだし、それを毎回イザナは見てるワケだからな、うん、ご愁傷様って合掌しといた。


結局、帰ってからまたエマがそれに気付いてシンイチローに聞くもんだから、シンイチローはまた締まりのねぇ顔してた。エマはエマで何故か顔をキラッキラにさせてたけど、俺にはわかんね。


「真ニィ!キーケースとかっていつも一緒にいたいって意味あるんだけど!」
「美憂がそこまで考えてくれてるとは限らねぇって」
「わかんないじゃん!ウチなら、そういう気持ち込めてケンちゃんにあげたいもん!!!」
「俺、どら焼き食お〜」


まじでわかんねーけど、美憂が絡むと二人ともいつも以上に楽しそうだからいっか。ストックであったどら焼きを一個持ってきて、ビニールの包みを開けながら、机に置いてあったシンイチローの携帯に何故か視線が行った。


「あ、シンイチローの携帯に美憂から電話」
「マジで?!」
「うっそ」
「マンジローッ!!!」
「真ニィ、チョロすぎ」
「お前ら、ひでぇな!?」


シンイチローは、美憂が大好きだ。それだけは俺にもわかる。だから、シンイチローはこれだけわかりやすく反応するし。だけどなーんも他に話が出てこないのは多分告ってねぇんだな。シンイチローならいつだって玉砕して終わるのに、これだけは進まない期間が長い。まあ、シンイチローにはシンイチローの考えがあるんだろうけどさ。

サイレントにしてるのか、音もバイブも起きねぇで机の上にあるシンイチローの携帯が突然ピカピカ光り出す。心もとないランプが何度か点滅しているし、通知画面を覗き込めば美憂の名前じゃん。あ、ホントに美憂からメール来た。しかも、メールの件名にRe:Re:Re:Re:Re:Re:いっぱい流れてるしって思ったけど、俺は見て見ぬふりしてどら焼きにかぶりついた。


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