真一郎と幼馴染 | ナノ

彼の本質に触れた日(イザナ視点)

シンイチローが変だ。

いや、元々変な奴だけど。オレの兄って言って現れて、弟として構ってきて。実際は血の繋がりだってねェのに、そんなの関係ねェって言って懲りずに歩み寄ってきたヤツ。そんな変なヤツに感化されて、色々あってからオレは今真一郎の店の手伝いをさせられてるんだけど。そんな真一郎が最近、余計変。

仕事中も上の空。ボーッと緩く仕事してるヤツだったけど、余計緩い気がする。いつものように黒龍の奴らが集まって話す時は気丈に振る舞ってるようだけど、オレと二人になった時、真一郎はオレのことすら気にしてないのかいることを忘れてなのか、一気に何かが抜けたかのように空になる。


「おい」
「…どうした?」
「アポ良いのかよ」


確か今日は、外回りのはず。そう話していたのに、真一郎は今日だってボーッとバイクをいじってる。カレンダーにアポのことを書き込まれていて、オレの思い違いではないのは確か。それを真一郎に伝えれば、ボーッとした後に「やっべ!」って勢いよく立ち上がり、持っていたのか足元にあったのかわかんねぇけど、金属が落っこちる音が店に響いた。

オレはエマと違って佐野家には住んでねェし、真一郎ともここで顔合わせるぐらい。真一郎はオレや万次郎、エマのことばっかりで自分のことは話しねェし、わかる情報といえばここで集まる初代黒龍の面々が話す話題からぐらいだろう。


オレはとりあえず今日真一郎から言い渡された仕事に取り掛かる。オレ一人でも問題ない程度の内容で、真一郎に教わった通りに作業をこなしていく。大体、この店には黒龍の奴ら、最低でも真一郎がいたからオレ一人で留守を預かることがあるのか、と思いつつ真一郎もお人好しだろ。そんな風に考えつつ、気付けば作業に没頭していて、また時間が少し経過した頃に取り掛かっていた作業も終了。ずっと飲まず食わずだったからな…と思って裏に行き、呑みかけのペットボトルに口をつける。半分以下になったのを見て、買わねぇとねぇ…コンビニ行きたくても真一郎が戻って来なければ、店を開けるワケには行かない。こういう時、黒龍の誰かがいりゃ良いんだけど、そう上手くいくワケもねぇ。まだあるし、後で良いか、と思っていたら店の扉が開く音が聞こえる。真一郎じゃねぇな。客だったら、今頃声をかけるはず。んじゃ、誰だよ。


「何の用」


店の中にいたのは見たことのねぇ女が一人。キョロキョロと中を見ていて、一応客か?手になんか袋持ってるけど。女に声かけたら、すげぇびっくりしやがった。思いっきり肩をびくつかせて、驚きすぎだろ。しかもあからさまに怖がりすぎ。しん、おーなー、てんちょって何。日本語もまともに言えねぇのか?鈍すぎだろ。真一郎に用があることがわかって、アポ取ってるか聞いたらねぇって言うし、めんどくさすぎて舌打ちした。


「お前何、真一郎のオンナ?」


エマの奴からは真一郎の幼馴染のオンナについてなんか言ってた気がする。こんな店に、用もなしで来るなら真一郎のオンナか何かじゃねぇとねぇだろと思って言ってみたが、女は黙りこくる。その表情は何かを言いたいのに言えない様子。なんだよ、真一郎といい、この女といい。ぜってぇこの女と何かあったってワケだろ。めんどくせぇな…。


「シンイチロー、もうすぐ帰ってくるから」
「え」
「オレは休憩入る。店番してろ」



ちょうどいい。オレは作業をひと段落させたし、コンビニに行きたかったんだからな。この女に店番させて真一郎の帰り待たせれば良いだけだ。ついでにお前らでお互いのしけたツラもなんとかしろ。



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