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 「再会のハグは後だ」


エイダは空母で手に入れたヘリを操縦し、赤く燃え盛るターチィの繁華街上空を飛行していた。
その横にはグレーツが乗っている。あのあと、二人は再度合流していた。
あとは私に、なんて言っていたが状況が変わったのだろう。
飛行中、エイダたちは黙ったまま眼下に広がった惨事を眺めていた。
そこに、何度も入っていた通信のひとつが入り込む。

『こちらHQ。状況を伝えろ』
『ここはもうダメだ!辺り一面!』
「確かにここは地獄ね…」
「ああ、ひどい有様だ」

エイダとグレーツは顔を見合わせる。

「レオン…」
「まだしぶとく生き残ってるあたり、本当に強運だよな」
「ええ、ほんと…シモンズ、カーラ、ここで全部終わらせてあげるわ」

ヘリが移動し、眼下にレオンたちを見つけたエイダが名前を呟く。
そのとき、レオンとエイダの目が合う。
生きていることに驚くレオンだったが、その隣にグレーツがいたことにも気づくとさらに目を丸くしていた。

「今回はあなたに譲ってあげる」
「あ?なにをだよ」
「まあ、栄誉…とでも言っておこうかしら」
「はあ?」

とぼけた態度をとっているが、グレーツは気づいている。
栄誉の意味を。
余計なお世話だ、と思ったが口には出さない。
エイダは、レオンを気に入っている。
その意味が示すものなど、一つだ。

「わたしは、裏方の方が向いているの、そちらはあなたに任せるわ」
「それはお互い様じゃねぇのか?」
「あなたは表裏両方扱えるでしょう?」
「まあな」
「無駄死にを見るのはもうこりごり。ここから私にできるサービスはこれで精一杯。だから、あとはあなたに。行きなさい」

サービス、というのはレオンたちへの援護射撃などのことだ。実を言うと、ここに来るまでに、ゾンビを先に一掃していた。
レオンをよろしく、そういうとエイダはヘリのピッチを開ける。
そこから、返事も曖昧にグレーツは飛び降りた。
グレーツは、レオンたちと少し離れた位置に着地した。

「今、グレーツが降りてこなかった!?それに、あの人は…!」
「ああ…エイダ、生きていたのか……いや、今は、とりあえず進もう。グレーツとは、多分、会えるだろう」
「レオン…」
「大丈夫だ、今のうちに避難しよう!」

ヘリから降り立ったグレーツは一人で路地裏に進んでいた。
レオンたちも向かっている裏路地へと。
そこにレオンたちに向けた通信を傍受する。

『レオン!無事!?』
『なんとか無事だよ、ハニガン。お先は真っ暗だがな』
『どうしてこんなことに!』
『何が起こったんだ、クリス…!』

裏路地からビルの中に入っていくレオンとヘレナ。そこで、グレーツは二人を待っていた。

『ハニガン、タワーへはこっちからでも…』
「二人とも、走れ!」
「グレーツ!?」

通信をしながら通路を進んでいた二人にグレーツが叫ぶ。
名前を驚き呼んだのはレオンとヘレナの二人同時だった。

「再会のハグは後だ!戦闘機、突っ込んでくるぞ!!!」

上空から戦闘機が突っ込んできていた。
しかも、その戦闘機からは燃料が漏れている。
それに気づいた三人は必死に走る。
戦闘機が爆発。連鎖的に周囲の車にも引火。爆発が広がっていく。
必死に逃げる三人。三人の後方では、大爆発で多数の車が吹き上げられている。
そこに、三人を見つけたBSAA隊員が声を上げた。
そこにはヘリが待機させられていた。

三人はヘリに飛び乗る。
ヘリが上昇を開始した瞬間、道路で大爆発が発生。

「クソッ!!」

飛び乗った際、足にしがみついてきたゾンビにレオンが毒づき、

「レオン、当たったら悪い!」

「おい!」と聞こえた気がしたがお構いなしにグレーツはゾンビに向けてハンドガンの弾丸をぶち込んだ。

「ナイス弾道!」
「何がナイスだ!当たっていたら本当にどうする気だったんだ…」
「そりゃ、一生償うさ」
「お前な…」

恥ずかしげもなく言うグレーツに、レオンは呆れた態度をとった。
ヘリで休息をする三人。
しかし、
そこで、がくりと急にヘリが傾く。
気づくと、ヘリのパイロットが項垂れていた。すでに、息はない。
パイロットを失ったヘリが道路に落下を始める。
「くそっ!」とレオンが再度毒づいた。

「おっと!」

グレーツはパイロットのいない反対側の操縦席で咄嗟に操縦する。

「あー、だめだ、あがらねぇ」
「機首をあげるんだ!」

そう指示し、グレーツを退かすと操縦をレオンに変わり、レオンは操縦席に座る。

「このままじゃもたないわ!」
「もたせてみせるさ!」

ヘリが揺れ、先程までパイロットだったBSAA隊員がヘリから落ちそうになっているのにヘレナが気づく。
危ない!と、慌てて肩を掴もうとした瞬間、グレーツがヘレナの腕を掴んだ。
「なにをするの!?」とヘレナに見てな、とアイコンタクトをするグレーツ。
落ちかけたBSAA隊員は足が引っかかり落ちるのを回避した。
ヘレナがホッとしたのは束の間。
そのBSAA隊員はすでにゾンビ化していたのだ。それを目撃したヘレナはグレーツの行動を理解する。

「そのまま掴んでたら、アンタ、危なかったぜ」
「あ、ありがとう…」
「二人とも大丈夫か!?」
「ええ……レオン!前!!!」

後ろを向き、二人の一部始終を見ていたレオンが叫ぶ。無事を伝えた二人。
安堵した瞬間、レオンが前を向くと、正面にビルが。
操作して避けるものの、硬度が下がってしまう。
さらに操作して、高度を上げようしたレオン。しかし、尾翼がビルに衝突した。

「二人とも何かにつかまれ!!」

尾翼を失ってコントロール不能になったヘリはそのままビルの窓ガラスにぶつかり、ビル内に突入。
勢いよくビル内のオフィスフロアの床を滑っていく。
オフィスフロアを突っ切ったヘリはタワーの大広間に続くスペースにある大きなシャンデリアに突き刺さった。
そのまま下へと三人は落下する。
三人…グレーツは受け身を取ったがレオンとヘレナの二人はガラスの床に叩きつけられる状態で落下した。
透明なガラスのその床の下にはゾンビがひしめいている。
ヘリがぶつかった衝撃で頭上にあったシャンデリアが落下。

「二人とも、上!避けろ!」

唯一体制を整えていたグレーツが叫ぶ。
間一髪で三人はシャンデリアをかわす。
下にいたゾンビの群れはシャンデリアの下敷きになった。

「みんな、無事か!?」
「ええ…グレーツ、助かったわ、ありがとう」
「ああ」

全員の無事を確認すると、三人はタワーの連絡通路を進む。
入口の大広間にたどり着くと、そこにはタンクローリーや何台かの車両、倒れているBSAA隊員の姿があった。

「様子がおかしいわ…」

ヘレナは異常な光景を前に、思わずつぶやいていた。








つぎ、あえてシモンズとのシーンカットしてオリジナルで書いています。



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