<1/3.5>

 「俺たちの目的はB.O.W.の残滅だ」



長い階段を登って行くクリス達の後ろを何をするわけでもなくグレーツはついて行く。
守りがないとはいえ、彼らの後ろを歩いているのだから、もちろん敵はすでにおらず、おこぼれすらないくらいで、先ほどとはあまりかわっていない。
隣のビルへと軽々飛び移るクリス達に、少し間を置いてから、続いてグレーツも飛び移る。加速が足りなくて真っ逆さま、なんてことはない。むしろ加速すらなしで歩く勢いでグレーツは飛び移った。

「...っと、本当完全無視なわけね」

クリス達と数十メートル離れた位置で、グレーツは壁に寄りかかり彼らの背中を見つめていた。
不意に、上空からヘリのローター音が聞こえくる。
ネオアンブレラというのも、どうやら相当暇らしい。

「また出やがった!諦めの悪いヤツだな!」
「HQ!アルファ エンゲージ!敵の目標はこちらへ変わった!...手段は問わない、堕とせ」

流石にヘリを相手にできるような武器は持ち合わせていないので、グレーツは建物の中に逃げ込んだ。
そこから、声を張り上げるピアーズとクリスの二人を、まるで映画でも見ている観客かのように見ながら、グレーツは楽しげに笑う。
そんな彼の前に、何体かのジュアヴォが群がってきていた。ヘリからは逃げられても、流石にこいつらの目はかいくぐれないだろう。

「...おいおい、こっちは見物中なんだよ。空気読めねえのか?邪魔は許さねえぜ」
「!..あいつ、なにやってんだ!」

愛用のピカドールとL・ホークを取り出し、グレーツは交互に複数のジュアヴォの頭めがけてトリガーを引いた。
囲まれていたグレーツを見つけたピアーズはどうしたものかとクリスの様子を伺いながらチラチラとグレーツの方を見ている。
見殺しには出来ない。でも、かと言ってクリスを置いて行くわけにも行かない。ピアーズは奮闘していた。
戦いながら、グレーツはそんなピアーズを「なにしてんだか」と思いながら見つめる。
不意に、ぱっちりと視線が合った。
ピアーズは、まさかこちらを見てくるとは思わず、驚いたように目を丸くする。
すると、グレーツは意味ありげに、フッと軽くピアーズへと笑いかけ、すぐに視線をそらした。
ピアーズは、そんなグレーツを見て「わけわかんねえ」と小さく呟く。内心で余裕気な表情から、助けはいらないであろうと納得しながら。

そのころ、グレーツは、戦っている最中に、クリス達とは違う、遠くの方から聞こえてくる何発かの銃声のことしか頭にはなかったようだ。

「あー、面倒くせえ」

なんて呟きながら、グレーツはあっという間に目の前の敵を一掃していった。愛用の銃をしまいながら、もう一つの銃声のした方に視線を移す。スキンヘッドの男..ジェイク・ミューラーの姿があった。相手はこちらに気付いていないらしく、墜落して行くヘリを目で追っていた。
どうやら、ヘリとの戦いの方も終わっていたみたいで、爆発音とともにヘリは木っ端微塵にグレーツの見ているところとは逆方向の方に墜落し、砕け散っていた。

「はあ..うっせ」

墜落していくヘリを、クリスも目で追いかけ見届けると、ふいに振り返り、下に居たジェイク達に視線を合わせている。
同じく、ジェイクも自身を見つめるクリスを目を細めながら見つめていた。目を合わせる二人..そんな二人をグレーツとピアーズは、さらに見つめる。
こっちが見ているにも関わらず、ジェイクはクリスだけを見つめているだけで、こちらには見向きもしない。
そんな光景に、別に、なんとも思わないが、一方通行な感じがして、なぜか少しだけ胸が痛んで、そんな自分に、さらに少しだけ苛ついた。
クリスと数秒間、目を合わせていたジェイクは、そばにいたシェリーと何かを話したあとにクリスから視線をそらしてその場から立ち去って行く。
そんな彼らを見て、ピアーズは焦ったように声をあげた。

「隊長、行かせちゃダメです!」
「俺たちの目的はB.O.W.の残滅だ」
「ネオアンブレラに追われているんですよ!助けないと..」
「目的はB.O.W.の残滅だ。何度も同じことを言わせるな」

まるで、融通のきかない者のように、クリスは同じ言葉を繰り返す。やることは一つだと。
ピアーズは、そんなクリスに苛立ちを感じながらも、自分の立場を考え、尊敬していた人物の言葉だと飲み込み、無言で俯き応えた。
グレーツは、彼らの言動を見て、呆れながら、クリスに対して嘲笑った。
復讐にかられた人間というのは、実に、笑える。

「あのB.O.W.を追う。エイダの好きにはさせん」
「隊長、冷静になってくれ..」

本当、哀れで、アホらしい。
クリスの背中を追いながら、グレーツはなにかを思い出したように笑っていた。





ボッチなう。
だいめいに特に意味はないです。

2に続きます。


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