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 「...見てたのかよ」



ーー2013/06/30
  中国 同地


クリスがいた場所から少し歩いたところにあった小さな公園で、グレーツは足を休めていた。
隊員が沢山いるあの場所で会うよりも、先回りしてまだ確認をされてない場所で民間人を装って発見されるほうがいいとおもったからだ。ここで会った方が、救助者として認識させやすいだろうし、それに、ここからなら救助やヘリを呼ぶことが出来ないだろう。
来たばかりなのに返されるわけには行かないし、ヘリに救助されないようにしつつ救助者として共に行動できるよう考えたというわけだ。
ここの地理は、既に調べ済みだったし、公園は隠れるのにももってこいだろう。

グレーツはパンダの遊具に腰をかけながら、通信機のデータファイルを気だるそうに開いてクリス達が来るのを待つ。
ちなみに、この通信機はエイダから頂いたものだ。透明な四角いキューブのような形をした通信機器。使う用途によって形が変わる仕様らしい。一見通信器には見えない代物だが......使い方はタッチパネル式と、かさばりはするが使い勝手は案外いい。

と、そんなエイダからの贈り物の話しはいいとして、
位置的には、そろそろ来そうなものだが......随分と遅いな。先に早く来すぎたか。

どこで油を売ってるのやら、とグレーツはぼやき、
脚と古ぼけたパンダの遊具を揺らしながらグレーツは一旦キューブ型通信機の画面を閉じた。
距離的には、もう来ていても遅くないのだか..どういうコトか周りからは人の声どころかなんの気配も感じられない。
通信機の情報だけでは、彼らがなにをしているかまでを知るのは流石に無理だ。無線を傍受するにしても限界がある。
まさか、何かあったのか?それか道を間違えた?
グレーツは、最悪とまではいかずとも、良くない思考にとらわれ、少しの不安にかられた。
奴らの生死がどうにしろ、合流するまえに勝手に動けなくなられるのは、こちらとしては非常に面倒くさい。会わないことには仕事どころか何一つこなせないわけで..最悪、今からこちらから会いにいくコトも考えておかなければ。

「でも、ま..あの男がそう簡単にくたばるわけはないしな。もう少し、大人しく待っていてやるとするか」

独り言になるかも分からないほど、小さくグレーツは呟く。
スウ、と一息を入れるように息を吸うと、煤焦げた匂いが、ふいに鼻をかすめた。

「やっぱりなんかあったのか..?」

動けなくなる理由は、命の危機だけではない。先ほどの怒りようはただ事ではなかったし、なんかを理由に油をうってるのかもしれない。
パンダの上に乗りながら、グレーツは「アホらし」と小さく呟くと、ふざけて軽く遊具を揺らした。







「あれから何分立ってんだよ......まさか、待つ場所を間違えたか?....いや、俺がそんな初歩的ミスをするわけ..................ん?」

あれから待って数十分..
おいおい。なんて、少なからず苛立ちと不安を露わにしながら、グレーツはパンダの遊具を小突きながら愚痴をこぼしていた。

ピピピッ。ピピピピッ。

そんな時だ、唐突にブルブルと、コートが小刻みに揺れた。
焦る気持ちを遮るように、なり出したのは最初にエイダから連絡を受けた仕事用の携帯。
ポケットにてをやれば、エイダから貰ったものではなく、携帯から質素な音が鳴っていた。着信..なにやら、誰かから連絡が入ったらしい。......いや、見ずとも誰かは分かるが。
一応確認のために、ディスプレイを開いて見てみれば、
案の定、発信元には...エイダの三文字が。
多分、クリスと合流しようとしてることを送っておいたメールの返信だろう。

メール画面を開けば、絵文字もない質素な文が画面に映し出される。


 そう、やっとついたのね。空の長旅お疲れ様、身支度の暇もなしの中国旅行はさすがに大変だったかしら?
といっても、休む暇は沢山あったみたいだから、元気そうだけれど。

いきなり連絡してきたから驚いたわ。
貴方も物好きよね、わざわざ表に顔を出すなんて。まあ、悪くない案だとは思うけど。
でも、あんまり遊ばないで頂戴よ。
予定が狂うんだから、そのぶん、怠けてないでさっさと情報を集めてきなさい。
無理なんてことはないわよね?あなたの腕を信用して依頼したんだもの、期待に答えてくれることを願ってるわ。

私は、もう少し用事を済ませてからそっちに向かうつもりだけれど、まあ、貴方は貴方で好きにしていなさい。

追伸:それと..パンダの遊具、良く似合っていたわよ。面白いぐらいにね?
まるで遊園地ではしゃぐ子供ようで、すごく可愛かったわ、ボク。



メールを読んで、咄嗟に俺は懐に入っていた通信機を調べた。
優しいようで皮肉じみた内容のメール。
だが.....まるでこちらの今の状況をみているかのような文面で、
しかし、まだエイダはここにはいないと内容を見ても書いてある。だとすると..
もしかして..
はっ、とそこでグレーツは気づく。
このキューブ型の通信機は、エイダから必要になるはずだからとここに来る直前に送られてきて預かったものだった。
必要になる。とは、いったいどういう意味の必要なのか考えもしなかった。
しかし、思い返してみれば、必要になるとはいったが、誰がとはいっていない。
もし、必要という言葉が示すのがエイダ自身で、これが俺の状況把握をするための道具だったとしたら?
それなら、先ほどの文章の内容も納得がいく。
しかし........それは、俺の納得がいかない。


「...見てたのかよ」

追伸の内容を読んで、グレーツは愕然としたようすで頭を下げた。
ようは、このエイダから渡されたものは、カメラ機能が常に作動していて、
そう..ずっと、彼女に監視されていたということだ。
マジでありえない。独り言もバッチリ収穫済み、と..
小型カメラをつけられていたことはいいとしよう。理由も詮索する気はない。職業柄警戒心が強いのも良く知っている。
しかし、今の今までずっと気づかなかったという事実を受け入れることは出来そうにない。
ふざけていたとはいえ、女に遊具で遊ん..乗っていたところを見られるなんて、ハズかしすぎる。
...見てたなら見ていたで、早く言ってくれれれば、まだ良かった。
相変わらず人が悪いってか性格が悪いやつだ。




 はいはい、分かってますよ。
ま、アンタもせいぜいミスしないようにがんばんなよ、先輩。
 あと、この贈り物は仕事が終わった後でしっかり返させてもらう。最高のプレゼント、どうも、アリガトウ。


遊具に乗る姿も様になってただろ?童心に帰ることもたまには必要だよな......なんか文句あるかよ、オネェサン?



破れかぶれぎみに、バーカ、なんて最後に書き加えてから返信し、携帯機を懐にしまうと、グレーツはパンダの上から気まずそうにそっと飛び降りた。















なにエイダの時間帯がおかしいのがわかり、後から無理やり修正したためさらにおかしなことになりました。
エイダはクリスたちが来ただいぶ後に来たんですね。ぬかった。
クリス達がきた後っぽいけど、あの赤い門があいてなかったから..あれ?って。時間軸分かりづら過ぎてさぁ(; ´ д `)
つか接触する暇もないのに預かったって..ま、まあスパイ稼業なんて謎が多くてなんぼですかry

ちなみにパンダで主人公が遊んでんのはゴリr のオマージュ?です。
あれは最初見た時は衝撃的だったよなあ..(←


2に続きます。


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