<1/1>

 「金はカード払いで頼むわ」

ーー2013/06/30
  中国 偉葉(ワイイプ)

「こんな時に中国に飛行機を飛ばせだなんて、あんたも結構な物好きだな。行くのは構わないが、俺は下ろしたらすぐに退散するぜ」
「ああ、連れてってもらえりゃあとはどうでもいいさ。ま、ちょっとした旅行だよ。むしろ、こんな時でもなきゃ中国なんかにゃ行けないからな」
「.........変わった野郎だ」
「よく言われるよ」

エイダとの通話のあと、簡単に支度を済ませ、ろくに準備もしないまま、書かれていたハンドガン二丁..ピカドールとトリプルショット、それと予備に愛用であるマグナム..L・ホークだけをこしらえて、エイダの寄越したヘリに乗り中国へと向かった。
中国行きの飛行機が全て止まっていたため、やむなくエイダに頼んでヘリを呼んでもらったのだ。金は後から俺に請求が来るらしい。依頼してきたくせに、随分とけち臭いものだ。
操縦士とたわいない会話をしつつ、
機内で彼女から送られてきた資料を見ながら、グレーツは小さく一つため息をはいた。

データには、
大統領がウイルステロにより殺害されたこと、そしてC-ウイルスという新種のウイルスによって中国内で発生したテロ事件のことについてのことが詳しく書かれていた。
それと、何をすれば良いのか。という今回の依頼内容についてだ。
内容は以下の通り。

中国内で起こっているテロの状況。およびC-ウイルスの調査。
なお、エイダ・ウォンと名乗る人物の情報が手に入り次第、こちらに連絡を入れるコト。
最優先事項は、こちらの行動がスムーズに進められるようにするコトである。邪魔が入らないよう厳重に注意するように。

とのコトらしい。
それ以上の詳しい情報は特に載っていなかった。なぜ、という疑問は自分で片付けろということか。
ようは、ある人物について調べるための邪魔を出来るだけ抑止をしろということだろう。その中で目的である人物の情報が手にはいればさらに好都合ってわけ。ウィルス調査は、知識としてあればイイ程度と言った感じか。


あとは好きにやれ、と彼女らしい仕事内容だ。

「こりゃ、仕事というより観光旅行になりそうだな」

こんな景色じゃなければ、もっと楽しめたろうに。
独り言のようにグレーツは呟き、楽しそうな顔とは裏腹に、残念がった声を漏らした。




それから数分後、ヘリの操縦士がまもなくつくコトをこちらに告げてきた。
何時間も空の上で揺らされていたため尻が痛い..やっとか、という意味をこめて少しホッとした息をつき、
グレーツは、データを見直してから通信用の携帯機を閉じ、それを雑にコートの内ポケットへとしまった。
目的地へとついたヘリは、徐々にコードを下げて行く。
グレーツは最後に銃の整備をして、ハンドガンなどをホルスターの中に入れると、操縦士へと「ここで良い」と告げて、そのままヘリから身を投げた。

「え、ちょ、ちょっと!!」
「運んでくれて、どうも。金はカード払いで頼むわ」

驚く操縦士をよそに、グレーツは「金は銀行払いでよろしく」なんてふざけた様子で軽く笑う。
なにせ、ヘリはまだ20メートルくらい上空を飛んでいるし、ロープも何も垂らしていないのだから、彼が驚くのも無理はない。
こんなに冷静に落ちて行くコトが、まず普通にあり得ないのだ。

「ここが中国か..さて、観光を楽しむのもいいが、まずは状況を把握しとかないとな」

よっ、と声を出し、差も平然とグレーツは地面へと着地した。
技とじみたようにこけそうな体制をとったが、軽々と平然に降り立った姿に、上から心配そうに見ていた操縦士もただ唖然とするしかなかったようだ。

着地した衝撃をものともせず、何事もなかったかのようにグレーツは歩きだした。





ヘリが帰った後、グレーツは携帯機を懐から取り出し、データファイルを開くと、まずは現在地を確認した。

地図と自分の位置を照らし合わせ、
周りの状況も確認しながら少し辺りを歩く。


現在地は..ワイイプ?
どうやら、危険地帯のど真ん中に降りてしまったらしい。
崩壊した建物、人の死骸、うろつく化け物、遠目に見える煙。
すでに悲鳴は聞こえてこず、周りからはサイレンの音や瓦礫の崩れる音しか聞こえてこない。
まさにバイオハザードと言った感じだ。

崩れた建物の隙間を通り、広い場所に出たと思うと、急にひどい熱気が肌をさすった。
少し肌寒かったせいか、いきなりの温度差に身体が驚く。
さらに歩いて、崩れた建物の中に沢山の人影を見つけ、足を止めた。
あれは...BSAAの隊員か?
見かけたのは、なにやら、見覚えのある格好をした奴らが、人の形をしている何か、蛹のようなモノを火炎放射器で燃やしているところだった。B.O.Wの処理といったところか。

「ひどい有様だな..これら全て、元は普通の人間だったと思うと、ゾッとするな」

コレが何かは、よく知っている。これが今回、俺が調べるべきウイルスによって変異してしまった者の末路..光景だ。
C-ウイルス。それによって、変異してしまった人間は、まずこのような硬い皮を身にまとい、いずれ、化け物へと姿を変え、生まれ変わる。自我を失い、自身が過去に縛られていたもの、命令されていたものなど、日常的にやっていたことや強く思っていたことだけを変異してもなお永遠とし続ける..哀れな人間の成れの果てだ。
まあ、なんていうか、個人差はあれど、知能が残るだけタチが悪い。
何回か見たことのある光景だったが、やはりいつ見ても良い気分ではない。

見つからないよう、身を隠しながら辺りを見回し、グレーツは小さく息をはいた。
ずっと何かに縛られて生きていく..それは、ひどく辛い。そして、醜い。
何かを思い返したように、グレーツは顔を伏せ、眉をひそめた。
不自由、ほぼ間違いなく意味はなく、この世でもっとも嫌いな言葉だ。

伏せていた顔をあげ、グレーツはもう一度周りを見渡した。
ここから少し向こう側の、崩れた建物の上に、人が出てきたのを見つけて動くそれに自然と目が向く。遠くて顔は見えないが、とても見知った姿が一つあって、「あ」と声を出し、間抜けにも口を開けたままグレーツはその人物から目が逸せなくなった。
他とは違った風格の人影。
俺はここに居るぞ、と言わんばかりにガタイの大きな男の方が、なにやら、声を張り上げて叫び散らしていた。
あの事件から、もう関わることはないと、思っていた人物。
なにをいっているのかまでは聞こえなかったが、一つだけ聞き取れた言葉があった。
エイダ。
ガタイの大きな男、クリス・レッドフィールドは確かにはっきりとエイダ・ウォンという名を怒りに満ちた声で叫んでいた。低く、怒りを感じとれるその姿は、まるで、復讐貴のようで。

面倒な人物を見つけたというのに、グレーツは困った態度を見せるどころか、楽しそうに口角が徐々に上がっていって、

「こいつは、つかえそうだな..」

そう呟いたグレーツの顔は、完全に笑っていた。
声を抑え、小さくクク、と笑う。
何かを企んでいる嫌な顔だ。

クリスはどうやらエイダという名の人物を追っているようだった。
そのエイダというのは、多分彼女のことではなく、もう一人のエイダの方だろう。
ようは、目的は、同じということだ。

なら、それを使わない手はないだろう?


出会ってすぐに行動を共にさせてもらえるかは気がかりだが...幸い、俺はあいつをよく知っているが、クリスは俺を知らない。
あの男は気難しいところがある。簡単に人は信用しないだろう。しかもあの怒りようだ。かといってどうにもならないわけでもないだろう。
さて、今回はいったいどんな嘘をついて騙そうか..クリス・レッドフィールド、あの男の時のようには容易くいかないだろうが、これも仕事だからな。せいぜい利用されてくれ。

「...あの時のようには、させないさ。今回ばかりは、絶対にな」

昔の記憶を思い出しながら、グレーツはフッ、と鼻で笑った。自分を馬鹿にするかのように。









リスタート
(五年ぶりのお仕事)


「さーて、旅行を満喫するとしますか......身体がなまらない程度にな」





ーーー
やっとかけた一頁め(`・ω・´)
主人公の降り立った場所はあの小ネタのある公園近くです。BSAAにバレるだろうって?そこは夢小説なんで、きっとまだここまで調査にきてなかったんだよと仮定しておきまry

エイダと違って、主人公はウイルスの調査が目的なので、行動把握という意味でも動かしやすいクリス達で話を進めて行くことにしました。ジェイクでもと思ったんだけどジェイク編だと一緒に居る理由が作れなかったので。
レオン夢になるのは結構あとになるとおもいます。

ちなみにエイダに依頼されたのはエイダがシモンズに誘い出された後、レオンに会う前もしくは後(27〜29日の間)に連絡した感じで、クリスとは記憶を思い出した後くらいにあったって感じです。時間軸が複雑でもしかしたらおかしいかもしれませんが、そうだったらすみません。

ついでに言っておくけど、超人設定には一切の意味もありません^p^(おい


←*#→




back top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -