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 「よろしく、強気なお嬢さん」


通信機が着信を知らせていたが、それを確認してる間も無く、クンルンビルへと扉を開けた瞬間目に入った人物にヘレナとレオンは駆けるとすぐさま銃を向けた。

「シモンズ!!!」

ヘレナがその人物の名を叫ぶ。
見上げれば、ビルの建設現場の上に、その場を後にしようとしていたシモンズの姿があった。

「これは意外な客だ」

ヘレナの声に気づき、シモンズが振り返る。
シモンズの周りにいた部下たちは一斉にヘレナたちへと銃口を向けてきた。

ヘレナたちを見下ろすシモンズを、三人は睨みつける。
いつ、どちらが撃ってもおかしくない状況だ。グレーツも、銃口を向けはしていなかったもののいつでも引き出せるようにコートの中へと手を忍ばせ、グリップへ手をかけていた。
緊迫した空気が流れる。
そんな張り詰めた空気の中、勢いよく扉が開く音とともに女性の制止を求める声があたりに響いた。

「待ってください!!」

慌てて声をあげたのは、扉から現れた金髪の女…入ってきたのは一度クリスたちと行動していた時に見かけた二人組の男女、ジェイクとシェリーだった。
女は声を荒げた後駆け出すと、レオンたちとシモンズの間に入り、立ち止まる。
一緒にいたジェイクも駆け出したシェリーの後を追って横についた。
その姿をグレーツは目で、追う。
初対面のはず、いや、実のところは一度顔を合わせたことはあるのだが、今は気にする余裕も時間もない。特になんの疑問もないまま話は進んでいった。

「シェリー、彼らにここを教えたのは君か?」

入ってきた女…シェリーに、シモンズはやれやれといった様子で問いの言葉をかける。

「…このテロに、あなたが関係しているって本当ですか?」

そんなシモンズを見上げながら、シェリーは未だ信じられないと、そうとれる表情で問いを返す。

「余計なことまで吹き込まれたか」
「答えてください!!!」

面倒臭そうな態度で返すシモンズに、泣きそうな表情で、シェリーは叫んだ。

「全てはアメリカのため…ひいては世界の、安定のためだ」
「それが……大統領を殺した理由か…!!」
「え、大統領を…!?」

吐き捨てるように言い放ったシモンズに、レオンが怒りに震える言葉をぶつける。
シェリーはそれが初耳だったのか、ひどく驚いた表情を見せた。

「何を言っている?殺したのは、君だろう?」
「シモンズ……!」

なんのことやら、とわからないと言いたげにシモンズはそう答えた。
此の期に及んで、まだ、そんなことを!とヘレナはシモンズの答えに怒りを露わにする。

「いつまでも君たちの戯言に付き合ってる暇はないのでね」

そんなヘレナを横目に、呆れた表情で、シモンズは周りにいた部下たちに「やれ」と指示を出した。

「やめて!」

シモンズの部下たちが一斉にこちらへと銃を射撃し始め、とっさにレオンたちは物陰へと飛び込んだ。少し遅れてグレーツもとりあえず銃を取り出しながら素早くレオンたちと同じ方へと身を寄せる。
レオンたちをかばおうと、前に飛び出たシェリーはジェイクに瞬時に抱えあげられて物陰へと避難した。

「他は構わん、だがあの二人は殺すな。まだ聞くことがある」

物陰へと隠れた五人は、皆静かに顔を見合わせる。
その時ジェイクが一瞬グレーツの方にも顔を向けたがグレーツはそれが分かっていたのか四人から少し距離をとった位置で先ほど取り出した銃を弄っていて目を合わせることはなかった。
どんな表情でこちらを見ていたのかは予想がつくが、今は話をしている時間もないし、わざわざ関わる必要はないだろう。

「まったく、無茶しやがって」

レオンの呟きで、ジェイクがグレーツから目を逸らしレオンたちの方へと向き直る。

「こっから先、英雄さんならどうする?」
「……あの扉まで走れるか?」

ジェイクの問いに、レオンは向かい側にある扉を示す。

「全員ぶっ殺したっていいぜ?」
「お前はシェリーを守ってやってくれ。お前にしかできない」

「往生際が悪いぞ!」というシモンズの声とともに一度落ち着いていた銃撃が再開する。
「早く出てきたまえ」という急かすシモンズの声に、今度はシェリーが問いかけてきた。

「レオンたち…はどうするの?」
「シモンズと決着をつける」

レオンの答えに、シェリーは中国にあった屋敷を脱走する際に手に入れた記録メディアを取り出すと、それをレオンに手渡した。

「この中に、シモンズが求める情報が入ってる……C-ウイルスの脅威から世界を救う方法よ…」
「…分かった」

記録メディアを、レオンは受け取る。
資料にあった情報によれば、今の職についてからシェリーを育てたのはシモンズとのことだった。そんな人が、と…何か、思うことがあったのだろ。きっと相手がレオンでなければ、シモンズがそんな人間であったと言う事をシェリーは信じられずにいたに違いない。

「さて、どうやら腹は決まったみたいだな。そうと決まったら、パパッと行こうぜ」
「あ、あの…あなたは……」
「…時間があるならいくらでも答えてやるところだが、分かってたから聞かなかったんだろ?だったら、やるべきことを今はやろうぜ、お嬢さん」
「ハッ、言われなくても分かってるよ」
「ええ…」

声はかけてこなくても、どうやら気にはされていたようだ。グレーツが声をかけたタイミングでシェリーがグレーツのそばに来て言い淀んだ。だが、何度も言うように今は時間がない。グレーツの返しにシェリーの隣にいたジェイクは分かりきった事をと笑って見せた。
シェリーたちの言動にレオンも疑問を感じなかったわけではないが、今更そんな些細な事をきにする間柄ではない。三人の会話が終わったのを確認すると、レオンは叫んだ。

「FOSに二人の保護を要請しておく。行け!」

レオンの合図で全員が一斉に目的の場所へと駆け出した。
レオンたちは銃を交えながらシモンズの方へ、シェリーたちは裏口へと繋がる扉へ。

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