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 「ようこそ、ここは私のお気に入りの場所」


見えたその人物の顔は、まだ雇い主であった主人が生きていた頃、関わりを持ってしまった懐かしい人物のものだった。
少し老けて入るが、見間違えるはずもない。
過去に騙し、裏切り、そして死を刻みつけてしまった人。

主人亡き今、もう会うことなんてないと思っていた人物だ。

「レオン...」

この事件に関わっていることは知っていた。けれど、いざ目の前に現れられると、どうしていいのか分からないものだな。

四人の声が飛び交う中、一人グレーツは足を止め、彼の名をつぶやいていた。

エイダを追う足音が遠ざかって行き、

「いたぞ!回り込め!」
「もう逃がさねぇ!」

不意に怒声に混じって聞こえてきた銃声に俺は意識を引き戻された。

「クリス..!」
「レオン...なぜお前がここに?」

銃声のした方に目を向けると、エイダに銃を向けるクリスにレオンが掴みかかり、取っ組み合いをしている光景が目に入った。
どちらも引かない攻防戦が繰り広げられており、緊張感が走る。
ピアーズはクリスのことを気にしながらもエイダに銃口を向け、後から追いついたもう一人の女は少し遅れて、クリスに銃口を向けた。
攻防をしのぎ、対面したクリスとレオンの二人は互いに銃を向け合う。
それを、遠くから見ていたグレーツは、互いに銃を向けあっていたクリスとレオンの二人に移動しながら目を細めて呆れた顔をしていた。

どうやら、今は自分のことを考えているような時ではないようだ。
そして、一発触発の二人に近づきながら、グレーツは先ほどとは違った意味で息をはいた。

「銃を下ろせ、クリス。彼女はこのテロの重要な証人だ」
「証人!?この女はテロの首謀者だ!!」
「違う。首謀者はシモンズ...合衆国大統領補佐官の男だ」
「この女は部下を見殺しにした!」
「俺たちは大統領と..七万人のアメリカ国民を失った!」

自分の意見を主張しあった、どちらも譲らないといった二人の会話。怒りに任せてまくしたてるクリスと、そんな彼を冷静に諭そうとするレオン。
しかし、今のクリスにはそんな彼の言葉は届きはしないだろう。

「ネオアンブレラだぞ...俺たちにとってこの名がどういうものか..」
「.........分かってるさ」
「どうあっても、この女を信じるというのか?」
「ああ......俺は、信じる」

どちらも一歩も引かないまま銃口を互いに向け続けていた。
そんな緊張感の漂う雰囲気に、全員が二人に目を向けている。
そのため、そんな場面にエイダの不敵な笑みを浮かべていたことに、グレーツ以外は誰も気がつかなかった。

「ここから逃げても、どうせお前は逃れられねぇぞ」
「あら、ご忠告ありがとう。でも、本当にそうかしらね?」

気づいてはいたが、だからと言ってグレーツはそれをどうにかしようとはしなかった。
すでに彼女にはエイダの場所を報告済みだ。俺が手を出すことでもない。
それに、俺の任務は、エイダの捕獲ではなく情報収集だ。それにケリをつけるのは俺ではない。
ピアーズの横に立ち、銃口を向けて警告してやれば、急に横に来た俺にピアーズはびっくりしていたが、そんなことは気にも止めず、エイダはまた不敵な笑みを浮かべると、懐から手榴弾を取り出し、閃光手榴弾をクリス達の方へと転がした。

「隊長..!!」

投げつける寸前で、エイダの動きに気づいたピアーズが声を上げたがもう遅い。
眩い光が辺りを包み、光が収まる頃にはエイダは下の階に移動していた。
なんとか足止めを試みようとピアーズはアサルトライフルを連射したが、エイダはそれをすり抜けて去って行ってしまう。
くそ!と声を漏らし、ピアーズは走り去るエイダの背を追って走り出そうとしたが、直後に聞こえてきたグレーツの声に一時足を止めた。

「目先にばかり囚われて、何も見えてないんだなあ、アンタは」

クリスも先ほどの取っ組み合いで落とした銃を拾い上げ、エイダを追いかけようとしていたが、グレーツの言葉に足を止める。

「アンタらの戦う目的は同じだろう?」

足を止めたクリスが、後ろを振り返る。
違うか?
そう、諭すようにそう問いかければ、クリスは銃を握る手から少しだけ力を抜いた気がした。
少しの間見つめ合いが続き、フッと笑いかければクリスは目を逸らし、次にレオンの方へと目を向け、口を開く。
レオンはグレーツの方を見て少し驚いたような顔をしていたが、クリスと目を合わせると表情も元に戻った。

「レオン...エイダはBSAAが追う。お前たちはシモンズを追ってくれ」

そう言い放ち、クリスはピアーズに行くぞと合図する。
一度クリスはグレーツの方にも目を向けたが、目を合わせても特に動こうとしないグレーツから何かを悟ったのか、そのまま何も聞かずに背を向けてピアーズと共に駆けていった。

「クリス!......お前を信じるぞ」

そんなクリスを今度はレオンが呼び止め、一瞬だけ振り向いたクリスにそう告げた。
クリスはレオンの言葉に返事はしなかったが、レオンには分かったのだろう。
駆け出していったクリスたちを見て、いいの?と問いかけてきた女性に、大丈夫だとレオンは断言する。
その聞かずとも分かるくらいのまっすぐな信頼を宿した瞳に、それ以上何も言えなかった。




クリス達の足音も遠ざかっていき、騒がしさも一時去って行く。
この状況下では、すぐにさて行こうかという気持ちにはなれず、かといって、聞くにも聞けず。
静けさが広がり、沈黙が三人の間を流れた。
長い沈黙が流れてから、その原因である残されたグレーツに、レオンはゆっくりと、目を向けた。
もう片方の女性も気になっていたのか、レオンを見つめつつ、チラチラとグレーツとレオンに交互に目を向けている。
目を合わせれば、次はなぜここにという疑問が当然湧くわけで。
聞かなければ何も進まない。
レオンはタイミングを図るようにゆっくり、ゆっくりと、ずっと思っていたその疑問を口にした。


「.........やはり、生きていたんだな......グレイ」


グレーツ、とレオンの口から名前が発される。
先ほど顔を合わせた時より、レオンは驚いた様子はなく、しっかりとグレーツの目を捉えていた。


「また会えて嬉しいよ、レオン。でも、残念ながら今は再会に感動してる場合じゃない」
「.........ああ、そうだな」

ご覧のとおり、と笑いながらいえばレオンは素直に喜べず、複雑そうに目を細めたが、特にそれ以上は何も聞かなかった。
確かに死んだはずだ、生きているはずがない。といってしまえばそうなのだが......エイダのこともある。
そもそも、聞きたいことは山ほどあったが、彼が言うように今はそれどころではない。
隣の女性も、何が何やらといった顔をしていたがレオンの態度に、聞くべきではないのだと察し、
「あんまり驚かないんだな」と思いながらも、状況が状況だったためグレーツも何も言わなかった。





やっとレオン編に入りました。ここからクリスとはお別れです。書くのに間が飽きすぎて6ってどんな感じだっけとすら思いながら書いてたのは秘密でs
でもなんだろうやっとレオンに会えたのにこの意外とあっけない再会になってしまった感、あとクリスとの別れも.....あっ、しかも次はジェイクとの対面か..

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         #→レオンルート




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