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 「少しは冷静になれよ!!」


彼女に似た女と話したあと、すぐにピアーズ達を追いかけたグレーツは足場のなくなった海の上で足を止めていた。
そして、多分、小さな橋やボートがあったであろう今は無残にもその残骸しか残っていない海を見て、これは骨が折れるなと面倒臭そうにしながらため息をはく。

耳が痛くなるほどの騒音が頭を刺激する。
上空にはヘリが飛んでいて、クリスがいるであろう場所が騒がしい戦闘音を放っていた。
あのヘリには多分人間ではない者が乗っているのだろう。元パイロットとかそういう類の奴が変異したジュアヴォか。

「あのヘリを利用すれば、なんとか彼方側の岸に渡れそうだな」

ここからクリス達がいる方に行くのは少し無理があるが、頭上とはいえすぐそこにいるヘリになら飛び乗ることは不可能ではない。少し高い場所からジャンプすればなんとか届く距離だろう。
「よし」と冷静に分析をしつつ、グレーツは銃を取り出し、左手にそれを握りながら近くにあった高台へと飛び乗った。
見下ろせば、遠くに協力性のないバラバラの動きで戦う二人の姿が目に入る。
一人で突っ走るクリスに呆れながらも、必死に彼をカバーしようとしているピアーズ。
なにをやっているだか、とグレーツは遠目に見える二人にため息をはきつつ呆れたポーズをとった。






「おっと、悪いね、ちょっくら相席させてくれ。急いでるんでね」

彼方側から迂回してきたヘリの音に合わせて駆け出し、高台から思い切り飛ぶ。
ガタン、と音をたててヘリが右に傾き、機体を揺らす。
ヘリへと飛び乗ったグレーツは、即座に運転席に乗っていたジュアヴォに銃を向け、言葉を言い切るとそのままなんの迷いもなく引き金を引いた。
操縦者を失い制御をなくしたヘリは物凄い勢いで回転しながら海へと堕ちていく。
振り落とされないようにバランスを取りながら、グレーツは反対側の建物へと飛び移る。
建物の中に入っていたクリス達は止んだ銃声のかわりに聞こえてきた海に堕ちるヘリの異様な音に何事かと飛び出して来て、
「倒しといてやったぜ」と言って笑いかけてきたグレーツにピアーズは目を見開きクリスは逆に目を細めて怪訝そうな顔をした。
「いつのまに?」とピアーズは小さく疑問を口にし、それにグレーツは「今追いついた」と何の気なしに返す。

「今、って......俺たちが通った後には道が壊されてなくなっていたはずじゃ..?」
「まあ、気にすんな。追いつけたんだからいいだろ」

そもそも今まで何をしていたんだと聞きたそうにこちらを疑惑の目で凝視するピアーズに銃をクルクルと指にかけて回しながら、気にすんなと呑気に笑い、グレーツは銃をしまうとそのまま歩き出す。
「おい」と納得いかず呼び止めるピアーズ。
「勝手にどこ行くんだ」と思ったが気づけばクリスの姿も先ほどいた位置にはなく、既に先に勝手に進んでいたようで、えっ、と二人に置いていかれたことに驚きの声を上げ、焦りつつピアーズは慌てて二人の後を追いかけた。



「お前、本当にいったい何者なんだよ」
「言ったろ、ウイルステロに巻き込まれたただの観光客さ。そんなことより、今はあの女を追いかけなきゃなんだろ?さっさと行こうぜ」
「......そうだな、今はそれで納得しといてやるよ。だけど、いつか絶対に聞き出してやるからな」
「期待して待っとくよ、その聞き出す瞬間とやらを」

女はこの先に居るんだろ、そう言ってグレーツはクリスの背中を追ってスタスタと歩いていく。
どうせ、真実を知ることは不可能なのだから、焦る必要もそれを気にする必要もない。
余裕を保ったまま、笑って逸らしてしまうグレーツにピアーズは一人もどかしさを感じていた。

聞き出したいが、今やるべきことはそれじゃない。そんなことよりも今は、一刻も早くエイダを...いや、一秒でもクリスから目を離さないようにしなければ。

何度も、また、同じ悲劇を、繰り返させないためにも。





海上レストランを後にして、グレーツ達はエイダのいる研究所へと足を踏み入れていった。








短くなってしまいましたが区切りが悪いので一旦ここで切ります。
もうすぐレオンと再会しますね!やっとです。



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