<1/1>

 プロローグ(ジェイク編)



俺も、つくづく未練たらしい男だとは思う。
そうは分かっていても、それでも、あの影を求めてしまうのは......俺の中にも、あの血が流れているせいなのだろうか。






ーー2012.12.24
  東欧 イドニア共和国


「しつこい奴らだな、悪いが俺はまだ監獄には入りたくはないんでね、お前らも程々にしといた方がいいぜ?」
「..................」
「こっちの話には耳を傾けてすらくれないってか、泣けるねえ......それとも、もう聞こえてねえか..?」

薄暗い廃屋の中に、複数の男たちが立っている。
その中でも、一人異様な雰囲気で目立っていた男がいた。
顔を隠すようにかけられた黒いサングラスと、口元全体を覆うように付けられたマスク。金色の髪だけが唯一見えており、服装は紺色のロングコートとラフな格好だが、それが逆にさらに怪しげな雰囲気を醸し出す一人の男は、手に持った銀色の銃をいじりつつ、向かってきている''人物''に対して皮肉気な笑みをマスクごしに浮かべていた。
迫ってきていた人物の手には、注射器のような物が握られていて、足元にも似たようなものがいくつか転がっている。

カチャリ、と金髪の男の触っていた銃からスライドを引いた音が鳴った。

余裕気な顔で、金髪の男は煽るように、周りの人物らに向けて、両手を広げ、呆れたポーズを取って笑う。
じりじりと迫ってきていた人物は、そんな男に向かって、いきなり飛びかかってきた。
襲いかかってきた人物は、そのまま男を押し倒し...その衝撃で、男のつけていたサングラスが外れ落ちる。赤い瞳が、その人物を睨みつけた。

「気性が荒い奴らだ、俺にそっちのけはねえんだよ」

一人の人物を筆頭に、周りにいた複数の男たちも、一斉に一人の男に迫ってくる。
襲いかかってきた人物を腕でおさえつけ、蹴りを入れれば、周りにいた奴らを巻き込んで吹っ飛んだ。
立ち上がろうとする奴らの一人に、銃をぶち込んでやれば、そいつはピクリとも動かなくなり、他の奴らは一目散に逃げて行った。
立ち上がり服の埃を払い、倒れて動かなくなった男を見下ろし、金髪の男は眉を寄せる。
ズキリ、とした痛みが腕を襲い...そこを見れば、腕には先ほど奴らが握っていた注射器が刺さっていた。

「......菌とか入ったらどうしてくれんだか、汚ねえな」

それを引き抜こうと、注射器に触れた瞬間、背後から複数の足音と共に、ストップという女性の声が聞こえてきて、男はそのままの体制で後ろへと振り返った。

「待って!貴方......それを使ったの?」
「..いや、打ったっつうか、刺されたっつうか......あー..そういう、アンタ''ら''は?」
「....刺された?.........あ、ごめんなさい、銃声が聞こえて来て、来て見たら貴方が居て...........それより貴方、大丈夫..なの?」
「...何がだ?特に、問題はないが..?」
「え?そんな..感染しているのなら、もうとっくに..」

振り返った先には、ブロンド髪の女性と、背の高い青年が立っていた。
男の腕に刺さっている注射器を見て、ブロンド髪の女は腕時計を気にしつつ、何やら眉を寄せて呟く。
感染という言葉が聞こえた気がしたが..意味が分からないふりをして男は首を傾げて自分の腕に刺さっている注射器をブロンドの女にみえるように引き抜いた。
中身は入れてないから感染してない、といえば、ブロンドの女は納得いかないといったような顔をしていたが、男から注射器を受け取ると結局それでよしとしたらしい。

「...よくは分からないが、別に俺は''コレ''を打ったわけじゃねえし。その、感染?とやらはしてないってことだろ。で、マジなところアンタらはなにもんだ?麻薬取り締まりにきた警察..には、見えねえけど」
「あ、ええと、私は合衆国の..」
「おい、こんなところで油売ってていいのかよ。俺の血を届ける仕事が残ってんだろ?金貰うまでは付き合うつもりでいんだ、話しは後にして行くぞ。てめーも、話し聞きたきゃ勝手について来い」
「え、ちょっと、''ジェイク''!...ごめんなさい、彼のいう通りあまり時間がないの。でも、貴方を見捨てたりもしないから安心して。とりあえず..ここから出ましょう、ついてきて」
「ジェイク、あれがウェスカーの...........ああ、なんか大変なんだな...分かったよ、お嬢さん」
「...お嬢さんはやめて、私はシェリー。シェリー・バーキンよ」
「ああ、あのバーキンの娘..」
「え..?」
「なんでもない。ここ、出るんだろ?だったらさっきのニイサンを追いかけようぜ、はぐれちまうぞ」
「う、うん....そうね」







実はエイダより前にこの事件には関わってました的な。そんな単なる裏話し。
ジェイクの出番が少な過ぎたので書いたってのは秘密。続きは気が向いたら..



back top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -