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 「...見てたのかよ」



エイダから通信が入ってすぐ、今度は、傍受した無線から、ザザッと何かの通信が入った。
誰かの声が雑音混じりに聞こえてくる。


HQ!アルファ エンゲージ!ピアーズ、マルコ!隊を再編!追うぞ!
了解!メンバーをピックアウトする!

この声は、多分..クリス・レッドフィールドのものだ。もう一つの声は知らないものだが..どうやら、やっと動きを見せたらしい。
何かに襲われたみたいだが、まだ一応生きているようで安心した。これで、やっと仕事が出来るというものだ。



それから数分もしないうちに、近づいてくる複数の足音が付近から聞こえて来た。
確認するように、公園の脇に隠れながら、足音のする方に目をやると、すぐに5、6人の人影が姿を見せた。
公園の横を通り、キョロキョロと周りを見渡し警戒をする数人の隊員達。その近くには、待ちに待ったクリス・レッドフィールドの姿もあった。
クリスは、今回は一個隊の隊長をしているらしいな。他にもクリスの周りに六人くらいが目視で確認できた。
さて、そうなったらまずは実行あるのみだ。
あらかたの詮索を終え、彼らが向こう側にある門をくぐろうとしているコトを確認すると、グレーツはすぐに行動にうつした。

ガサリ。
あとを追うように公園から飛び出し、グレーツはクリスのそばに近づいた。
彼らに気づかせるように、足音を鳴らしながら、顔には焦りを貼り付けて、手振り身振りは嘘っぽく。はたから見たら、助けを求めて来た民間人の図の完成だ。
案の定、こちらの存在を察知した数人のBSAAが、咄嗟にこちらへと視線を向けると、一斉に銃を構えてきた。
全てはこちらの想定通り。
グレーツは、演技じみたようにさらに驚いた表情を見せ、両手を上げてから、大袈裟に焦ったような態度をとった。

「ああ良かった、やっと普通な奴らに出会えた。アンタらちゃんとした人間だよな?」
「誰だ!?」
「おっと、待った待った。いきなり銃向けるとかマジ勘弁」
「応えろ!何者だ。感染者か!それとも、民間人か?」
「..いや、民間人ってか、観光っつーか、とにかく俺は単なる一般人だよ、普通の人間。だから、ソレ、下ろしてくんねえ?」

ソレ、と彼らの持っていた銃を顎で示す。
一般人だと言うグレーツの言葉に、隊員たちは顔を見合わせた。
人間はわざわざ普通の人間とは言わないかと言ってから思ったが、まあ今更しょうがない。

「どうした、何事だ?」
「あ、クリス隊長..いや、それが、観光客だとか言う奴が急に現れて、怪しかったんで、今話しを..」
「観光客..?こんなところに、まだ人間が?」

そんな隊員達の前を進んで居た、目的の人物であるクリス・レッドフィールド、それと、前髪をかきあげているまだ若そうな情報で見たことのある青年が騒ぎに気づいて何事かと姿を現した。確か、名前は......ピアーズ。そうだ、ピアーズニヴァンスという名だったはず。BSAAの狙撃手であり、若くして名を上げているエリート隊員で、Cウイルスにも関わりのある孤島の学園で起きたテロ事件の制圧にも参加をしていた......だからなんとなく記憶に入っている。
クリスの問いに対して、隊員の一人が慌ててグレーツを示す。すると、続いて、青年...ピアーズが疑問の声をあげた。

「んだよ、化けモンでも見るような目で..ここに人間が居るのが、そんなにおかしいのか?」
「すでにここは汚染地区に指定されている。まともな人間がいることは、まずありえない。疑わない方がおかしいだろう」
「つか、周りをちゃんと見て回ったけど、さっきは確実に居なかったよな?あんた、いったいどっから..」
「俺、隠れんのは得意なタチでね。それに、ちょうどいいことに、ここにはかくれんぼにもってこいの場所もあったし、アンタらの目をかいくぐるくらい目じゃねえさ」

質問には答えず、グレーツは遠回しにわけのわからない言葉を返した。先ほどまでの演技じみた態度とはうって変わって、余裕のある笑みを浮かべながら。
怪しい。そんな彼の態度に、隊員たちは口々にそう考える。
クリスは、グレーツの言葉に呆れたように顔をしかめた。

「...なに?」
「..隊長、そういえば、あの公園だけは流石に誰も確認はしていませんでした..もしかしたら、あそこに隠れていたのでは?」
「なるほど..なら、君はあそこで隠れてずっとやり過ごしていたというわけか。救助も呼ばずに、ただ平然と待っていたと」
「仕方ねえだろ、なんか街が変な雰囲気になってて、人が居たって急に襲って来るヤバイ奴らばっか。下手に動いたら何が起こるか..俺はまだ死にたくはないんでね、だからもしかしたら誰か通るかもって一か八かにかけてずっと隠れてたんだよ。そしたら、マジでアンタらが来たもんだから、助けを求めたってわけ。なあ、アンタらって見たところ自衛隊かなんかだろ?保護してくれよ、いいだろ?」
「やり方はともかく、ようは救助者ってわけか..どうします、隊長?」
「どうするもなにも、俺たちのするべきコトはB.O.Wの残滅だ。彼の言い分を聞いている暇はない、他の奴らに任せておけ」
「.....はい、わかりました。じゃあ、救助要請を出しておきます」

呆れたように質問をするピアーズに、ほんの少し、怒りを含んだ言い回しで、クリスは放っておけと突き放したように言った。
ピアーズは、ただその言葉に従う。
しかし、それではこちらとしては困るのだ。せっかくここで待っていたというのに、共に行動を出来なきゃ意味がない。こうなるコトは想定の範囲内ではあったが、流石に面倒だな。
「アルファよりHQ、ルート9、スペードエース付近の公園にて..要救助者を確保」とピアーズの口から若干納得がいかないような口ぶりで言葉がはっせられる。
グレーツは気だるそうに頭をかきながら、彼らの言葉に咄嗟的に反論の意をしめした。

「って、おいおい、ちょっと待てよ。俺はわざわざアンタらに保護してくれって頼んでんだぜ?いつ来るか分からねえ救助とやらを、ここでまたずっと待つなんてまっぴらゴメンだぞ」
「..もちろん、数人だが隊員を護衛として待機させておく。君を一人にするわけじゃない、心配するな」
「心配とかじゃなくてよ、こんな不気味な場所でまだ待たせとくのかって言ってんだよ。アンタらがくるまでもどんだけ待ったと思ってんだ?単なるわがままでここまで言わねえよ、俺の言い分も分かるだろう?」
「...そうだな。だが、誰もここで待てとは言ってない。ちゃんと安全な場所に移動を、」
「あの..隊長、ですがこの辺り一体は、すでに危険エリアに指定されています。どこにいたってほとんど変わりはありませんよ。それに、この地区じゃあ場所によってはヘリも呼べませんし」
「はあ?おいおい、考えなしにモノを言ってんじゃねえよ。救助?安全?馬鹿は休み休み言えっての。ふざけてんのか?」
「なんだと?おまえ、したてに出てりゃいい気になりやがっ、」
「ピアーズ、やめろ。いいんだ、俺が邪険にしたのも良くなかった。そうだな、君の言うとおりだ...仕方がない。安全な場所までは俺たちが連れて行こう」
「え、隊長..?」
「やっと分かってくれたか。最初からそうしとけばいいってのに」
「おまえ..!」

どんなに言葉を重ねても、一向に引き下がる気配のない二人。しだいに、グレーツは気だるそうな態度で言葉を返していくようになり、クリスも対応が雑になっていくのが感じられた。しまいには、思ってもいないことを言ってしまうくらいに。
流石に見兼ねたピアーズが言葉を挟んだが、返された言葉に彼も我慢出来ずに苛立ちを吐き出していた。キレたピアーズの態度に、咄嗟にクリスが止めに入ったが、これもグレーツの思惑だとは誰も気づいていないだろう。
ピアーズでも誰でも良かったのだが、誰かが見兼ねてモノを言った時に、態とらしくバカにした態度をとって、ムカつかせたのはこちらの作戦だ。
戸惑う隊員達をよそに、クリスはまんまとグレーツの思惑通りの動いた。ここまでうまくいくとは思っていなかったが。
もう一度バカにしてやると、面白いくらいにピアーズが食ってかかって来たが、またクリスに止められて気に入らないというようにこちらを睨みつけてきた。

「だが、一つ覚悟しておけ。そこにたどり着くまでには、もちろん危険なエリアを通るコトになる。何が起こるかは分からない状況だ、極力、君を守るようにはするが、なるべく自分のコトは自分で対処するようにしろ。こっちも命がけなんだ、最悪、君を気にしている余裕なんてなくなる」
「説教ならお断り。そんくらいワガママで言ってんだから理解してるって」
「....自分の身だけは守る。ついてくる以上、これだけは約束しろ。わかったな..?」

クリス・レッドフィールドは強い口調で、もう一度確認をするように言う。
ここばかりは、流石のグレーツも空気を読んで、真面目に肯定の言葉を意味して頭を縦に振った。







「ピアーズ..奴から目を離すな。エイダのコトもある、信用は出来ない」
「はい、分かっています」
「あの男は絶対に何かある..この場で目を離すよりも、こちらで見ておいたほうが良さそうだ。他の隊員にも伝えておけ、ピアーズ..油断はするなよ」
「!..あ、はい!」

グレーツを目で捉えながら、クリスはエイダのコトを思い出していた。
あの男は怪しい。いや、態とらしいのだ。
何かを企んでいる、確実に。
昔を思い出した今、クリスは彼を疑わずにはいられなかった。






「クリス・レッドフィールド..案外侮れないなあ、あいつは」



最初に主人公に喋りかけたのは、マルコとかそこらへんの奴。とくに決めてなかったので曖昧です。
にしても、ついてく理由がぶっちゃけやっつけ過ぎて何だこれって感じに(´・ω・`)
最初はクリスとピアーズ二人の時に会わせるつもりだったんだけど、どうしてこうなったのやら..夢小説難しいです(切実

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