「ユーシャさまは、疫病神なんかじゃ..ない。ユーシャさまは、この世界を救うためにやってきた、救世主なん、だよ」
「宗教まがいの神父が、戯れ言を抜かしてんじゃねえ!」
「そうだ、そうだ!こいつが現れてから、疫病が広がって、俺たちは苦しんでんだ!ぐうせんなんかじゃねぇ!こいつは疫病神だ!!」




「ユーシャさま..僕は、大丈夫です……そんなことより早くしないと、世界が…ユーシャ様……世界を…」
「ユー…..?なんで…」
「ユーシャさま、どうか我々人間をお救いください..」

迷える、哀れな人間たちに、救いを……




世界を救うために、ずっとずっと頑張ってきたのに。
人間たちを守るために、ずっとずっと戦ってきたのに。
人間たちのこの行動が、おれには理解出来なかった。
そして、こんな奴らからおれを守ってまでして、世界を救ってくれなんて言う、ユウの行動にも、おれには理解することは出来なかった。


「憎まないで..僕たちのコトを。お願い、ユーシャさま...この世界を、救..って」


力の抜けていく手を握りしめて、おれは震える。
こんなの、こんな、なんで、
おれたち、あいつが何をしたっていうんだよ……なんで、なんで…!

こんな、こんな世界を救って、いったいなんになるというのか。
いままでおれを疫病神だと散々言っていたた人間たちが、そんなおれに救われ、今度は打って変わって勇者だの救世主だのといって、生きている今を喜んでいる。
人間は単純だ。そして、哀れだ。


瞳からたくさんの水滴ながれてくる。
あれから、
世界は救われ、おれは人間たちから救世主として崇められた。
でも、何にも心は満たされなくて、胸が苦しくて、体から力が抜けていくような気分になって、
この気持ちが、なんなのか、分からない。

すっぽりと一人分の隙間が、空いたような感覚。


きっとこれが、
哀しい。辛い。虚しい。
って、きみが教えてくれなかった、教えたくなかった感情なんだって、

ただただ、おれはそう思った。

最後まで笑って、世界の為を考えていたあいつは、おれよりもよっぽど。


ああ、人間なんて…



そんな綺麗事ばっかりな弱き人間たちを救った勇者のお話しは、都合よく美化され、いずれ長きにわたって語り継がれることだろう。
世界を救った救世主「ディセンダー」の物語として。



この物語はその絵本が作られる少し前、なぜディセンダーという存在が生まれ、認識されるまでになったのかを書き記した、ちょっとしたお話です。






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