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 ようこそ、バンエルティア号へ



一通りの顔合わせも終わり、カノンノに連れられてもう一度チャットのいる機関室へと戻った。
「みんな、良い人だったでしょ?」なんて話しをカノンノとしていると、機関室で待ち構えるようにして待っていたチャットが見つけるなり「自己紹介は済んだようですね」と会話に割り込むようにして二人に話しかけてきた。


「さっそく、取り掛かるんですか?良い心がけです」

「ああ。それで、依頼というのは何の

「ホントは由緒正しい海賊船なんですけどね。まだまだ海賊をやるには足りないものも多かったので、それでギルドを始めたんです」

「.........」


話し出すなり、チャットはユウの言葉も気にせずに淡々と語りだす。
不服そうにユウは眉にシワを寄せ、カノンノは本日何度目か分からない飽きれ顔をした。


「少し脱線してしまいましたね。とりあえず、手順としてまず、ここで依頼を儲けてください。そうすれば、色々分かると思うので」

「...分かった」



依頼リストの中から、一つを選び、「それでは、頑張って下さい」という言葉を背中に二人は一旦機関室を後にした。




* * * *




「今回の仕事は、アメール洞窟でオタオタの退治だよ」

「おたおた..」

「それは、魔物の名前。丸くて青いのよ」

「そう、か」

「あ、そうだ。外に出る前に、一度ショップに寄って行きましょう。武器とかアイテムとか、購入しおいた方が、戦いが楽になると思うから」

「ああ、分かった」

「ま、待って!そっちじゃないよ。ショップは、通路の一番手前の部屋だから..」

「....すまない..こっちだな」


苦笑う二人。
そんな光景に、カノンノは雲行きを不安に思ったのだった。



* * * *




「ここの1層目と2層目にいるオタオタを3体倒すのが、私達の仕事だよ」


目的地に付くなり、すぐさまに二人は行動に出た。
装備もアイテムも、完璧に揃えて来ている。問題はきっとないだろう。


「それじゃ、まずはオタオタを探そう?多分、すぐに見つかると思うから..」

「..あそこに青くて丸い物体が」

「え?あ..あれだよ、オタオタ!」

(..当たってたのか)

「逃げられちゃう!行こう、ユウ!」

「あ、ああ..」


スタスタと走りだしたカノンノの後を二三歩遅れて追いかけるユウ。
オタオタのいる場所には、ものの数秒で到着した。


「ユウ、戦いのしかたは分かってる?」

「何故かは分からないが、大丈夫だ」

「それなら良かった。じゃあ、私は前線で敵を引き付けておくから、貴方はその間に魔法で敵を倒し..

「ああ、分かった」

「って、え?ちょ..なんでユウが前に行くの!違うよ!ユウは術師なんだから前衛は私に任せて魔法を..」

ユウは静かに頷くと同時に、ニヤリと楽しそうな笑みを浮かべ、カノンノの言葉も聞かずに敵の元へと近づいていった。
カノンノはそんな彼の行動に焦って声を荒げるが、とうの本人は全く聞く耳を持っていない。
どころか、術師であるはずなのに前衛でカノンノが働く意味も暇もないくらいに素早く手早く敵を殲滅していた。

「あ、あれ..?」 

「カノンノ、何を突っ立ってるんだ?もう片付いたぞ」

カノンノは瞬時に消えた敵の居た場所と、楽しそうな笑みを浮かれているユウの姿を見て、軽く目をまるくした。
なぜカノンノが唖然としてるのか分からなかったのか、ユウは彼女と同じ表情を浮かべる。
ユウは晶術を唱えた様子もなく、ただ杖に多少の血がこびりついていだけ。どうみても敵を殴り倒している。
こんなの単なる魔術師のやる行動ではない。

「え、と..ユウってば、随分と戦い慣れしてるのね..体は覚えてるってもの、なのかな」

「うん?これくらい、普通じゃないのか?」

「普通..なの?ユウって前はいったいどんな生活を...いや、でも、ユウのおかげで簡単に片付いちゃったから良かったよ、お疲れ様」


カノンノはユウの戦い方に多少驚きながらも、気にしてはいけない事なのだと思いながら、ユウへと「依頼も終わったし、帰ろうか」と言っていつものように微笑みを見せた。



****




機関室に戻ると、チャットが出迎えてくれた。

「これで依頼は完了です。」

「本当におつかれさま、ユウ。モンスター退治って、その..思ったより簡単だったでしょ?えっと、今はまだ覚えることがたくさんあるかも知れないけど、少しずつ焦らずに、慣れていけば良いと思うから」

「ん、ああ..このくらいなら、大丈夫だ」

「うん、ユウならすぐに慣れると思うわ。じゃあ、これからもこの調子で頑張ってね!わからない事があったら、なんでも聞いてくれて構わないから」


カノンノに優しい言葉に、ユウは「ありがとう」とシンプルに感謝の意を返す。
初めてのクエストは何事もなく?無事解決したのであった。











▽.おまけ
「ユウは..その、魔術師より...接近タイプの職業の方があってるんじゃないかな?」

「接近..タイプ?」

「そう、例えば..剣士とか、格闘家とか」

「.........そうか、なら..今度は剣士、とやらにしてみる事にしよう」

「この際だから、色々な職業を試してみたら良いと思うわ」

「ああ、そうだな。盗賊というのも気になっているし、そうしてみるよ」

(杖で殴るなんて...後衛としてあるまじき行為だもんね、それにあれは怖いし!)



――――――
戦闘時だけ、ほんの少し?黒い(怖い)ディセンダー様。

初期は魔術師なんです。
それにしても地味に進んで行きますね..早くユーリ来い!←





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