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 避難所/秋
主人公幼児化


「えっと、ここは迷子センターでも子供がお使いに来るような店でもないんだけどな」
「そんな事は、見れば分かる」
「...じゃあ、君はどうしてここを訪ねて来たのかな? ここがどういう店か、分かってる?」
「知らないで、わざわざ長い階段を上って来るものか」

目の前に現れた六歳くらいの少年に、秋山は困り果てた顔をした。
なにせ、金を借りに来るような年でもない、まだ幼き子供が親も連れず一人でスカイファイナンスへとやって来たのだ。しかも、ただでさえ子供は嫌いなのに相手は物凄く態度の悪いくそガキと来たもんだ。
どう対処すれば良いのか、全く検討がつかないし、帰すっていったって、それはそれで簡単ではないだろう。
こんな時に限っていない花ちゃんに、何と間の悪い事だと、ほんの少しだけ殺意の波動..いや苛立ちを覚えた。

「まあ、とりあえず 座って話そうか?」
「別に話をする気はない ちょっと隠れたくて寄っただけだからな」
「え?隠れるって もしかして、かくれんぼの隠れ場にするために入ってきたの?」
「アンタ、馬鹿か?たかが隠れんぼの為だけにこんな怪しげな場所に入っていくわけないだろ」
「馬鹿って 君ねぇ、じゃあ聞くけど、君は何から隠れてるわけなの?」
「妙に鬱陶しい関西弁を使う、眼帯付けたオッサン。それとその部下達から」
「え、ちょ 待って、それって」

見知った顔が思い当たり、秋山は少年を驚愕した眼差しで見つめた。
まさか、この少年はあの人の逆鱗に触れる事でもして来て追われているのだろうか、などと考え、もう一度少年を見る。
実際、結構粗相の悪い子供だ。有り得ない事もないだろう。むしろ有り得まくるだろう。
しかし例えあの真島さんでも、こんな小さな子供をそこまで執拗に追い回す事をするだろうか?有りえたとしてこの少年は一体何をしたのだろう..

「なんでそんな人達に、目を付けられちゃったの、君?」
「理由なら、この体だ」
「体..?」
「ああ というより秋山、いい加減気づかないのか」
「え、気づかないって 何を?」

意味が分からず、ハテナを頭上に浮かべる秋山。少年は一つ「はあ」と大きく、少しばかり大袈裟にため息をついた。
その行動に、秋山はさらに大量のハテナを浮かばせる。

「私の名前は、成司だ と言えば分かるか」
「え?成司..? って、えええ!!?も、もしかして君成司ちゃん!?嘘..!」
「もしかしなくてもそうだ。やっと分かったのか愚鈍め」
「い、いや、だっていつも以上に小さく..」
「いつも以上に、だと?」

秋山は禁句を言ってしまった事に気づき、ハッとする。しかしすでに時は遅く、少年 成司はギロリと鬼の形相でこちらを睨みつけていて、秋山は焦ったように引き強張った笑みを浮かべた。
その少年の行動に、ああ 本当に成司ちゃんだ、と正体への核心を持ちながら。







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