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 貸し借り /秋山



「成司さん、こんなところで何してるんです?」
「.........秋山か 見たら分かるだろう、いつもの状況だ..」
「ああ また、あの人に追われてるんですか  成司さんも懲りないですよね」
「私は別に何も悪いことはしていない。懲りてないのはあの人の方だ..」
「いや、是が非でも人を寄せ付けてしまうその魅力、的な意味で..」
「は?」
「なんでもないです、気にしないで。その鈍感なところがまたイイよね、って話しですから」
「はあ? わけが分からん..」

たまたま見かけた見知った後ろ姿に声をかけた秋山に、成司は振り返って不機嫌そうな顔を見せる。
また、あの人に追われてるんだな、と返答を返されるよりも先に悟った秋山は苦笑いを浮かべながら案の定な返事を聞いて成司の嫌厭とした態度に同情の気持ちを抱いた。
上司である真島に追われている。普通であったら何したのと驚くところだが、彼にとってはそんな状況は日常茶飯事だった。怒りを買ったとかではなく、暇だ遊ぼうなどという理由で追いかけ回されているのだ。会長である大吾ですらその見慣れた光景には呆れたため息を漏らしているのだからきっともうこの状況は改善されることはないだろう。
真島を含め、ほぼ全ての主要人物達に気に入られている成司には、ついているその後ろ盾を思うとたまに頭を下げたくなる。成司の人間関係は、どうしたらそんな人と仲良くなれるのと思うレベルのものばかりだ。まあ、自分もそれを言えるような立場の人間ではないけれど。桐生さんとか冴島さんとか、あの一年で一気にありえない人たちと関係を広げたわけだし。
でも、成司の場合は人間関係以上にその関わった人間の大半が彼に惹かれているから凄いのだ。真島含めて、大吾や桐生と東城会のお偉いさん方が総惚れだ。
まあ、自分もそのうちの一人なのだが。
しかも、彼には、それがありえない事だとか惚れられてるという自覚がないから、また恐ろしい。
真島に追われている理由も多分嫌がらせ程度にしか思っていないのだろう。お気の毒に..

「あ、ここで提案なんだけど、せっかくだしこれからどっか行きません?お店の中にいれば少しは見つかりにくくなるんじゃないですかね?」
「それは、まあ、一理あるな..」
「ですよね!でも、一人でどっか入るってのもアレじゃないですか。ほら、食べるにしても飲むにしても だったら、俺と行きましょうよ」
「別に行くのは構わないが、どこに行くかによるな」
「おっと、ここで重大な選択を迫ってきますか..」
「大袈裟だな」
「だって、行きたくない場所選んだらせっかくのデートがおじゃんになっちゃうわけでしょ?それは困りますよ!まったく、成司さんも人が悪いんですから..」
「デートと聞いた時点で、今まさに行く気が失せかけたわけなんだが」
「いやだなあ、言葉の綾ってやつじゃないですか 冗談ですよ、冗談。ちなみに、成司さんお腹は減ってます?食べに行くか飲みに行くかで選ぶ店、変わってくるんですけど」
「冗談にしては顔がマジだった気がするが、見なかったことにしておこう」

成司が行くという態度を少し見せただけで秋山は嬉しそうな顔をして、ウザいくらいに構ってきた。
若干、成司がそのウザさに、眉根を寄せる。
でも、なんやかんや嫌そうな顔や素振りを見せてもその場から離れない辺り本気で嫌っているわけではないのがまたなんとも。帰ろうとする素振りは見せる成司に待ってと焦った声を上げる秋山ぐ、秋山が気付いているのかは分からないが。

「そうだな  腹は減ってないが、今は飲む気分でもないな」
「まさかの飲食店以外ですか」
「ああ、ちなみに遊びに行く気もない」
「しかも、プレイスポットもダメと」
「買い物に行く気分でもないな」
「もう、ホテルに行くしかないですね、これは!」
「なんだか今、無性にバットが振りたくなってきたな..」
「じょ、冗談ですよ」
「そうか、なら良かったよ」

ことごとく案を却下してくる成司に、えー、という顔をする秋山。
冗談なのかはたまた本気なのか分かりにくいギャグをかまされたところで、成司が笑っていない笑みを浮かべ、秋山が冷や汗を垂らす。
しかし、こうも行く場所を限られてしまっては、これではもう行く当てなど一つしかないじゃないか。
秋山はいつも通りの結果に内心うなだれる。

「.........スカイファイナンスで真島さんが飽きるまで暇でも潰しましょうか」
「......そうだな」

結局こうなるんだな、と秋山は期待していたデートは諦め、自分の慣れ親しんだビルへと足を進めて行ったのであった。
まあ、これはこれでいいか、と思い内心諦めにも似た感情を浮かべながら。



「下手に遊びにいくより、部屋でのんびりしている私は好きなんだよ」
「...そうなんですか」
「アンタの時はな」
「.....................え?」

行き際に話した言葉の意味を、俺は部屋についても話しが耳に入らないくらいにずっと悶々と考えていた。




扱いが酷い?いや、これから発展して恋人になるんだよ^ω^←←

秋山は気を許しあっていて、一番一緒にいて気持ちが安らぐ、仲の良いお友達。なんでも話せる仲とも言うかもしれない。

敬語なのかタメなのかギリギリの境を行く口調なのは仕様です。秋山書きずらいですn




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