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 家族日和 /桐生



「急だったというのに 迷惑がるどころか、ご飯まで頂いちゃって、すみません」
「気にするな。遥も喜んでいるし、子供たちも、お前を歓迎している。それに、むしろこっちが無理やり押し付けたようなものだからな」
「いや、そんな 押し付けただなんて、私はお言葉に甘えただけですよ。ご飯、とても美味しかったです」
「そ、そうか..」

桐生を身長的に下から見つめながら眉を下げて申し訳なさそうな顔をする成司に、桐生は微笑みながらそんなことはないさと否定の言葉を返す。


成司は、沖縄へと行く用事が出来たらしく、朝一番の便で沖縄へと向かい、仕事終わりに桐生ところを訪れていた。
挨拶がてらにアサガオへ。と、桐生の元を訪ねると、急だったためか成司の顔を見るなり、桐生と遥も最初は驚いていたが、すぐに二人は嬉しそうな顔で笑うと、遥は歓迎したように成司を中へと招き入れてくれた。
成司は挨拶だけのつもりだったのか、そんな、遥へと遠慮するように困ったような表情を浮かべる。
しかし、嬉しそうに笑う二人の顔と、子供たちの迫力に負け、結局成司は晩御飯までご馳走されることになるのだった。
そして冒頭のシーンへと戻る。
ご飯を食べ終わったあと、成司はさらに申し訳なさそうにしながら桐生へと頭を下げていた。
桐生は、そんな成司にフッと笑うと、気にするなと優しい言葉をかける。
困ったような、嬉しいような、複雑な表情を浮かべながら、桐生の言葉に成司はお世辞ではなく素直な気持ちを返した。
すると、はにかんだように、桐生さんは笑った。
自分の作った料理を美味しかったと言われたことが嬉しくも恥ずかしかったのだろう。今日の晩御飯は、桐生が当番だったらしい。
桐生のそんな表情に、成司も僅かに嬉しそうな表情を浮かべていた。





「....こうやって、大勢で食べるのも、たまにはイイですね」
「ん?ああ やんちゃな奴らばかりで疲れただろう?今日は、子供たちが迷惑をかけてすまなかったな」
「いえ、結構楽しかったですよ。なんか 家族ってイイな、って思えました」
「...そうか」

不意に、ぼそりと呟いた言葉。
幼い頃に親をなくし、養子に拾われた..家族がいないも同然の成司にとって、桐生たちのような家族のような関係というのが、とても新鮮だったらしい。
桐生は、成司のそんな言葉に、フッと笑いかける。
言葉とは裏腹に、その時、成司は思いつめたような、遠くを見ているような そんな、虚しい顔をしていた。

「さて 長居をしては迷惑でしょうから、私はそろそろ帰りますね。まだ、沖縄には居るつもりなので、何かあったら連絡をして下されば..」
「ちょっと待て。そのことなんだが  成司、良ければ 今日はここに泊まっていかないか?」
「.........え?」
「もう遅いし、今から帰るのも危険だろう。まあ、お前なら大丈夫だとは思うが せっかくだ、成司が嫌じゃなければ、泊まっていかないか?その方が、皆も、遥も喜ぶだろうしな」
「え、いや、それは..」
「別に無理強いをするつもりはない。嫌なら断ってくれても構わないぞ」
「あ、いえ、そんな、嫌とかじゃないんですが その、迷惑では ?」
「自分から言っておいて、迷惑も何もあるか。遥たちもダメとは言わないさ どうする?泊まって行くなら布団を用意するが..?」
「どうするって  本当、貴方には負けますよ」
「ん..?」
「...はい、じゃあ  お言葉に甘えさせて頂きます。泊まっていっても イイですか?」
「あ、ああ もちろんだ」

そろそろ帰ろうと思って廊下に出たあたりで、不意に、桐生に待てと言われ腕を掴まれた。
成司は何事かと振り返ろうとしたが それよりも早く発せられた桐生の言葉のせいで、振り返った瞬間、成司はものすごく間抜けな声を出す羽目になった。
多分、顔も相当間抜けな表情になっていたと思う。
桐生は、そんな成司の反応を見るなり、迷惑がっていると感じたのか、嫌ならいいんだ と、謙遜したような態度をとって言った。
尊敬している桐生にそんなふうに言われては、断れるわけもない。
桐生の済まなさそうにした顔を見て、成司は苦笑いを浮かべると、仕方ないなあといったように分かりましたと肯定の言葉を返した。
すると、桐生はとても嬉しそうな顔で微笑んだ。
そして、何を思ったのか不意に成司の頭を撫でてきた。だが そんな桐生の行動にあからさまに嫌そうな顔で、成司が眉を寄せてムッとしたのは言うまでもない。
しかし、態度とは逆に、内心ほんの少しだけ成司が嬉しそうにしていたりしていたのは秘密だ。

その後、すぐに泊まることを遥に伝えてくる。といって桐生は居間の方へと行ってしまった。
一人残された成司は、桐生が居なくなった途端、無意識だろうけど、なんだか嬉しそうに口元を綻ばせていた。











「お前を見てると、なんだか可愛くって つい、な」
「可愛いって そんな真島さんみたいなこと言わないで下さい。私は子供でもなければ、男ですよ..?」
「ああ 分かってるさ」
「...絶対に分かってませんよね。だから、頭撫でないで下さい..」
「え?あ、すまない..」
「........」
「そんなにふて腐れるな。今度何か奢ってやるから なんなら、ここにいる間にもし時間が取れたらどこか出掛けないか?」
「え?あ、そう ですね、どこに行こうか考えておきます......」
「ああ、どこにでも連れてってやるから遠慮せずに言えよ(行くのは拒否しないんだな、まったく可愛いやつめ..)」
「は、はい.....」


家族日和。
(はたからみれば なんだかんだで、イイ親子?)



はじめは、やはり桐生ちゃんで!

いきなり始まっていきなり終わりましたが、時間軸は3として書いてます一応。
桐生ちゃんは基本面倒見いいから、親になったら良いお父さんになるに決まってる、と勝手な妄想から親子っぽい二人が書きたかったのに全くもって親っぽさの欠片もなくなった作品です(´・ω・`)
しかし、あんな人が親だったら、私なら確実に親孝行とかして尽くしまくるわ(ぇ

ちなみに、主人公は家族とは疎遠してるという設定です。




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