好奇心による奇行 /高杉
主:品田宅居候の青年
※品主前提の高→主



「品田、 邪魔すんぞー...... ってなんだ、 お前ェ一人か?」

気持ち程度にノックを数回叩き、返答など待つ気もない素振りでガチャリとガタついた扉を開ける。
軽いノリで中に入ればいつもなら聞こえてくる制止の声がなく、なんだ留守かと舌打ち混じりの呟きを漏らす。
すると、もぞりと人の気配と共に布の擦れる音が聞こえて来て、部屋の中をよく見ればこんな汚い部屋に好き好んで居座っている変わり者の姿を見つけた。
「ん..」という声を漏らし、むくりと起き上がる小柄な体。
「品田は?」とそんな寝ぼけた顔をした人物に問いかければ、そいつは目をこすり少し時間が経ってから口をゆっくりと開いた。

「......ん、 ああ... 品田なら、 今日は取材とかで、 朝早くに、 出かけましたよ..」
「んだ居ねぇのか...... そうか、 悪かったな、 寝てたとこ起こしちまったみてぇで」
「...............いえ、 別に..」

寝起き特有のゆったりとした喋り方。
途切れ途切れに言われた言葉に、不満を感じながらも理解の声を漏らす。
答えた人物、成司はまだ覚醒しきっていないのか、未だ眠そうにぼーっとした顔をしており、謝罪の言葉を口にすればまた少しおいてから構いませんといった返事を返して来た。
なんていうか、見た目の割にはいつもクールな態度をとっている奴と同じ奴とは思えない変貌ぶりだ。多分、低血圧なのだろう。
普段生意気な口を聞く癖に敬語で返して来たこともなんだか妙な感じだった。
なんだかな、と思っていれば、そいつがぼーっとした表情で、まだ何かようですかといった様子でまるで小動物のように首を傾げてこちらを見つめてきて、
生意気な奴、だと思っていたが、こうしてみると案外可愛いもんだな。なんて、一瞬馬鹿げた思考すら頭をよぎった。

「随分眠そうじゃねぇか、 昨日遅くまで起きてでもいたのかよ?」

部屋に土足で上がりつつ、首を傾げていたそいつに平然を装って近づきながらケラケラ笑ってそう言えば、成司は返事すら返すのも億劫になったのか「ん」という声だけを漏らし、なぜかそのままこちらを見つめたまま固まった。
なんだ、と思いつつ不意に見つめて来たそいつの真っ直ぐな瞳に、可愛いなんていう馬鹿げた思考を通り越して、何故かよからぬ考えにとらわれそうになり、俺は待てと自分を抑止する。

いやいや、待て待て、相手は男だ。

可愛い程度ならまだしも、アレだナンだを考えちまうとか..
あり得ないだろと思い、気持ちを落ち着かせようと一回冷静になって考える。

こいつは男で可愛いのはともかくぐっとくるとかそんなのは何かの間違いだ、しかもこいつはあの品田の..


品田の......?

と、
そこまで考えて、ふと奴の顔が頭に浮かび、 ちょっと待てと邪な思考を押さえ込んでいた言葉を一旦脳内から排除した。

そして、
興味心という新たな思考を頭に浮かばせる。


品田が気にかけている存在。
どこで拾ったのか知らないがいつのまにかこの部屋に住み着き、何故か品田から想いを寄せられている素性も何も分からない男。
俺は、そいつに少なからず興味があった。
あの無類の女好きで野球か女のことしか考えてないような男がなぜこんな子供みたいな顔した男を、と。
女が掴まらねぇからってついに手頃の男に手を出したのかと考え、気でも違ったのかと思ったが、話しを聞いて見ればどうにも奴は本気でこいつのことをそういう意味で気に入っているようで、
ケツの具合がいいんじゃなかったらなにが良くてこいつに目をかけていんのか。
そこが、ずっと気になっていた。





これは、ほんの興味本位によるちょっとした気の迷いだ。

そう、気の迷い。本心ではない。


カツカツと足音をたてて相変わらず散らかった部屋の中に踏み込む。

そして、未だ眠そうにこちらを見つめていたそいつに、そのままゆっくりと近づいていき、汚ねぇ床に膝をついた。

寝ぼけた思考では俺の行動を疑問にすら思わないらしくそのままされるがままにされるそいつに、俺はゆっくりと、ゆっくりと顔を近づかせる。
しゃがんでその顔を見つめ返せば、一瞬だけそいつの眉に皺が寄り、眉尻が下がったように見えた。
そして、視線をそらそうとしたそいつの頭を、俺は強引に掴み、さらに顔を近づかせる。

あとちょっと、
数センチ、

と、
触れるか触れないかの距離まで近づいた時、タイミング良くキィっと立て付けの悪い扉の開く音がして、聞き慣れた元気な声が部屋と耳に響いた為、俺はピタリその体制のまま動きを止めた。

「ただいまー! いやあ今日はすっごく収穫があってさ、 いい取材が...... で、 き......... たっ、 たたっ、 たたた、 高杉さんんん!!?」

頭をつかんで顔を近づかせてあと数センチでくっつくよ!という状況の高杉と片思い相手に、品田は勢い良く帰って来た時とは対照的なまでにポカーンと口を開け放って二人に目を向けていた。
帰って来て早々知り合い同士のいけない状況を見てしまえばそうなるだろう。しかも片方は淡い想いを抱いている相手こと成司なら尚更だ。
状況が理解出来ずポカーンと口をあけて間抜けな顔をしていた品田は、数秒見つめたあとやっと構図を理解したのか、高杉の名を呼ぶのにかなりの動揺を露わにしてどもりながら叫んだ。なにやってんだ!?という言葉を無視して、ただいまと平然を装って品田に話しかけた高杉に品田がまた声を上げる。

「おう、 早かったな品田」
「...............」
「な、 ナニっ、 高杉さっ、 なっ、 何! 何やってんすか!?」
「いや、 こいつがあんまりにも目醒まさねぇもんだから」
「説明になってないっすよ!? っていうかむしろ寝てたこいつに、 なにしてたんすかマジで!!」

みりゃ分かんだろ、と挑発的に返せば、品田は「えっ、 えっ?」と困惑した声をあげて確認するように二人を交互に見る。
そんな品田に高杉は見せつけるように成司の肩を抱き、俗に言うドヤ顔というものを向けて楽しそうに笑っている。
やけに静かな成司に目を向ければ、若干顔を赤らめて、見事なまでにピタリと高杉の腕の中で固まっていた。

「うわああああ!」

と、品田がそんな二人のそれっぽい光景に悲痛の声をあげた。
片思い相手がまさかの知り合いに取られたりしていたうえにめっちゃ照れてる顔をしてたりしたら叫びたくもなるだろう。彼のような性格ならば。
高杉は高杉で腕の中の人物の態度を見て「ほう」と一人納得の声をあげていて。

「なるほどなぁ、 確かにこいつぁ上玉だ..」
「なにがなるほどなの!!!? というか成司も嫌がったりしなよ! 今この人に食われかけてたんだよ、 君!!」
「え、 あ、 いや、 あの.........は、 離して、 下さい..」
「...............」
「だめぇえ! それ逆効果ぁああ!!」

恥ずかしそうにうつむきながら言われた一言に、高杉の中の何かがプツリと切れた気がした。
真顔で彼のことを見つめ出した高杉に対して、何考えてんだ!いやナニ考えただろ!と察した品田は、顔がマジだよ、この人!!と騒ぎたて、悲鳴にも似た叫び声を上げて高杉と彼を強引に引き剥がして、
庇うように赤面していたはずの彼を抱きしめた。

その途端、

遅れてやって来た恥ずかしさによる彼なりの照れ隠しを受けて、品田は吹き飛んだ、もとい蹴り飛ばされた。

「なんで!!?」
という品田の声が響き、高杉が噴き出す。

照れ隠しを発動した成司は未だ赤面した様子で下を向いており、
困惑した様子の品田が再度理不尽と声をあげていその光景に、高杉は声を荒げて笑った。


笑う高杉の声と理不尽!という不敏な声は、プレハブ小屋を通り越し外を通る人達にまで聞こえていたという。






とりあえずまず言わせてください。高杉変態にしてごめんなさいいい!(スライディング土下座
高杉さんと品田の三角関係が書きたかっただけなのに何故こんなキャラに......品田が常識人て...
しかも三角関係ってか品→→主→←高にになりました…...高杉さん、兄貴っぽい貫禄あるくせに実は小物で品田が大好き(?)なのにツンデレしてるっていうキャラが大好きです。高主もいいなあって。
というか設置的には夢主くんこれOTE主くんなので立場的には高杉より上だし真島や大吾から目をかけられてる奴に手を出したとかこれ多分高杉知られたら死亡フラグ..

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