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 携帯電話 /秋山
主:OTE夢主


「今開けますー!」という声と共にガチャリと開かれた扉。
「こんにちは」と声をかければ扉を開けた彼女はその人物の名前を呼んで嬉しそうな声をあげた。

「お久しぶりです! わざわざ成司さんから訪ねてくるだなんて、 今日はどうしたんですか?」
「ああ、 いえ、 大した用事ではないんですが、 ちょっと秋山に話しを聞きたいことがありまして..」
「あ、 えっと... すみません、 訪ねて下さったのに、 今社長出かけちゃって..」
「みたいですね... いえ、 だったらいいんですよ、 そこまで大事な話しというわけでもありませんので、 また暇な時にでも電話してみます」
「わざわざ来て下さったのに、 すみません。 だったら、 社長が帰ってきたら私から連絡するように伝えておきますよ! あの人だいたい電源切ってるか携帯持ち歩いてないから、 連絡しても出ないかもしれませんので!」
「そうしていただけると助かります」
「いつ帰ってくるかもわかりませんからね.. 電話で呼びだそうにもあの人何故か携帯を持ち歩かないから、 ほんと困るんですよ... 今日も電源入れてないみたいでさっき連絡したら繋がらなくて!いつも厳しく行ってるんですけどね」

まったく、と怒る花に成司は苦笑いを浮かべる。

「まあ、 分からなくもないですけどね、 その気持ちも」
「え?」
「電源きってるっていうの、 私の場合は、 しつこい人が知り合いにいまして、 かかって来るたびにそう思うこともありますから。 たまに本気で... 携帯を叩きわりたくなることもありますよ」
「そうなんですか? 成司さんも色々大変なんですね..」

ええ、と遠くを見つめていう成司に何があったんだろうと心配になった花はなんといっていいのか分からず、大変なんだなととりあえず思っていた言葉を口にする。
この場に秋山がいたのなら「あああの人か」と呟いていたことだろう。派手な服を着た眼帯の男を思い浮かべながら。

「といっても、 大事な電話もかかって来ますので手放すことは出来ませんけどね」
「そうですよね、 大事な話しだったら困りますからね。 社長もそうやって持ち歩いてくれれば...... 持ち歩いて... あ! そうですよ! それですよ!! それ!」

それだ!といきなり声を上げた花に成司は「え?」という驚きと困惑の混じった声を上げる。

「社長も出ないといけないような相手からの大事な大事な電話がかかって来れば、 ちゃんと電源入れた状態て持ち歩くようになるかもしれません!」
「あ、 ああ、 そうですね、 確かにそうですけど... 出なければならない相手が今いないから、 こうなってるんですよね? 急にそんな方が出てますか?」
「成司さんですよ! 成司さんがたまに社長に電話すれば、 絶っ対に持つようになります! 着信入ってたのに出れなかったなんてことになったらあの人必ず落ち込むと思いますから」
「え? ...私?」
「そうですよ! 成司さんです!」

花の話しに何故?と首を傾げる成司。
私でそれが改善されるのだろうか、と当然の疑問を口にすれば花からは貴方だからですよと力強く言われてしまい、さらに成司は頭を捻る。

「だって社長、 この前今日みたいに成司さんが留守中に来たっていったらすごく残念そうな顔をしてましたから。 あとから出かけたこと後悔してましたよ、 そりゃあもう面倒くさいくらいに」
「はあ... そうなんですか」

若干呆れた顔で「そうなのか」と聞けば「はい!」と花から元気良く返されてしまった。
何だかな、と思う反面、ションボリと落ち込む秋山の姿が簡単に想像出来てしまい、納得しそうにもなる。

「まあ、 私が電話するだけでいいのならご協力はしますけど..」
「本当ですか!?」
「はい。 花さんからの頼みなら断るのは申し訳ないですし、 それに持ち歩くようになればこうしてすれ違うことも少なくなるんなら... 私にとってもメリットはありますからね」
「わあ、 ありがとうございます!! こっちこそ申し訳ないです! 成司さんにこんなことさせちゃって..」
「またに電話をすればいいだけなのでしょう、 なら楽なものです。 ついでに貴方の元に戻るようにでも促しときますよ」
「ええっ、 いや、 そんな悪いですよ!」

嬉しそうにそれでいて申し訳なさそうにいう花についでですと強調して言えばやっぱりイケメンは違いますねとよく分からないことを言われてしまった。

「なにか、 いつかお礼しますから」
「いいですよ、 花さんからお礼なんて、 いただけません」
「いえいえ、 そんな私こそ成司さんに何もなしで一方的にやってもらうなんて..」

だったら何かお礼を、と言い出した花に成司は困り顔をし、花に遠慮の言葉を返す。
しかし、それでは困るんですといった様子で花に否定されてしまい、
何度いいですといっても、それでも引かない花に逆に申し訳なくなった成司は「じゃあ、」と仕方なさそうに言う。

「それなら... 秋山になにか奢らせてもらうことにします。 電話代がわりにでも、 ついでにどっか誘ってみますよ。 奢らせるつもりで」

それでどうです?と提案してきた言葉に花はいいですね!とその時は頷いた。
なら、良かった。これなら花には迷惑がかからないはずだ。と成司は一人ホッとして花に笑いかける。

の、だが、
話しも終わり社長も帰ってくる気配がなかったので帰ろうとしていた成司を「また来て下さい」なんて見送っていたあたりで、不意に冷静になって、

「あれ、 これなんやかんやで社長の恋の手助けしちゃったんじゃ?」

と後になって一人花は思い、帰る彼の背中を見ながら複雑な気持ちを抱いたのであった。


それから数時間がたって、帰ってきた秋山が成司が居た事実を知って項垂れるのも、
数日後に成司からの着信履歴を見て出れなかったことに後悔して携帯をきちんと持ち歩くようになり出したのも、

それは、
また別の話しである。









おまけ

「秋山、 携帯持ち歩くようになったのか」
『えっ、 あ、 はい... 成司さんから連絡があった時に困りますし... 花ちゃんからきつく言われちゃったんで、 ハハ..』
「そうか... なあ、 秋山」
「は、 はい? なんですか?」
「都合が合えばだが、 これからどっか食べに行かないか。 電話代がわりに、 お前の奢りで」
「え!? ...い、今から、 ですか!? っていうか電話代って..?」
「嫌ならいいが」
「いっ、 嫌なわけないじゃないですか!! 成司さんと食べに行けるんだったむしろ時間作っちゃいますよ! 今からそっち向かいますんで、待ち合わ... あ。 でも、 流石にこれすっとぼけたらまた花ちゃんに... ああっ、 ええっと! す、 すみません成司さん! 今実はちょっと手離せなくて... えっと、 集金! ちゃちゃっと終わらせちゃいますんで、 ちょ、 ちょっとだけ待っててもらえますか!?」
「.........なんだ、 集金の途中だったのか。 じゃあ、 終わったら連絡してくれ。 終わるまで、 私は劇場前あたりで待ってるから」
「は、 はい..」
「でも、 なんだ、 ちょっと見直したよ。 お前が仕事手放してまで来たら流石に幻滅していたとこだ。 意外とそういうところはしっかりしてるんだな。 まあ、 頑張れよ。 じゃあ、 また後でな」
「え? あ、 えっ? ちょっ、 成司さん今のどういう..!! 成司さあああん!!?」






動揺しまくってた秋山はさっきの意味を聞く為にいつもの倍は早く、マッハで集金を終わらせて待ち合わせ場所に来たらしい。
秋主書きたくて書きたくて書いたんですがなんかよくある感じのネタに..でも動揺してる秋山がかけて勝手に満足しました。


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