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いたずら /柏木
主:柏木の同居人
「あ、 柏木さんお帰りなさい。 ご飯の準備とか出来てますけど、まず冷麺と私、 どちらにします?」
ガチャリという音を立てて玄関のドアが開き、中に入ると待つこともなくすぐに同居人である彼が奥から姿を現した。
いつもなら「おかえり」と、素っ気ない言葉を送るだけで終わるお出迎えなのだが、今日は違った。
照れるわけでもなく、笑いながらでもなく、むしろ真顔でしかも棒読みと、怖いくらいに感情のない言い回しで、ただ唐突に目の前の彼は言ってのけた。
今時有り得ない「ご飯とお風呂どっちにします? それとも..」なんていう、ごくありきたりな質問を。
「ああ、 ただい... は?」
堅物であった彼には、唖然としたように目をぱちくりとする事しか出来ない。
そんな反応を見た、目の前の当人は満足そうに笑みを浮かべた。
「私とご飯どちらにする?」なんてありきたりな問いをかけてみたら、いったい彼はどんな呆れた顔を見せてくれるのだろうか、なんて思いながら、面白半分に試してみただけのコト。
きっと堅物のこの人物なら、顔色一つ変えず、もしくは呆れながらも「冷麺にする」と即答してくれるに違いない。なんて思って居たのだが、返ってきたのは想定内ではあったが、想像とは違った顔だった。
当の彼は、質問に答えるどころか、私の言葉に呆然とこちらを見つめている。鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔だ。
想定とは違ったが、まあ、これはこれで面白い反応だったので良しとしておこう。
「はは、 そこは驚く以前に突っ込んで欲しかったんですけどね。 あ、 冷麺すぐ用意するんで、 ちょっと待ってて下さい」
「え、 は? あ... ああ、 なんだ... 急に驚かせるんじゃない」
ちゃっかり冷麺にしておくところがまたなんとも。
彼は冷静を装りながら言葉を返しているが、内心残念がっているのはバレバレだ。
「ちょっとしたジョーダンじゃないですか、 怒らないで下さいよ」
「別に怒ってはいない。 ただ、 お前という奴はだな..」
「説教はお断りです。 それより、 早くスーツ脱いじゃって下さい。 まさか、 そのまま食べる気ですか?」
「またそうやってはぐらかす... まあいい。 ああ、 すぐに脱ぐよ」
「はいはい、 はぐらかしてすみませんでしたねえ。 あ、 ネクタイとってあげましょうか?」
「...どういう風の吹きまわしだか。 また冗談、 か? いい、 自分でやる」
「たまには恋人らしいコトをしようとしただけじゃないですか。 相変わらず柏木さんは堅物ですこと」
「..................」
フフ、と馬鹿にしたように成司は笑い、いいと断られたにもかかわらず彼のネクタイを外していった。
そんな彼に、何を思ったのか、呆れていただけなのか、彼は成司を見つめたまま黙り込んだ。
「もし先に風呂に入りたいんでしたら、 別に冷麺はすでに冷めてますから入って来ても構わな...... って、 柏木さん?」
「............」
「あの、 どうかしましたか?柏木さん... か、柏木... さん? もしかしてまだ怒って..」
沈黙したまま動かなくなった彼を疑問に思い、成司は少なからずの不安を感じながら何度も彼の名前を呼んだ。
すると、唐突に動き出した彼は、いきなりすごい勢いで成司の腕を掴み、驚く成司もよそにこれまたすごいコトを言い出した。
「そうだな、 あそこは突っ込むべきだったな..」
「え...?」
「よし、 寝室に行くぞ、 成司」
「え、 いやちょ、 え?」
「誘ったのはお前だろう?」
「は!? ちょ、 アレ冗談だから、 つか突っ込むってナニを...... 柏木さん? ちょ、 本気ですか? いや、 あの、 ほんと柏木さ、 待って下さ、 やめっ、 何をする気ですか!? 本当にやめて下さい!!?」
爆弾発言。
こんなはずじゃなかった!
なんて、悲鳴にも似た叫び声を挙げながら、成司はそのまま寝室へと引っ張られていった。
(こんな展開、 冗談じゃないぞ...!)
(冷麺は、 食後に食べるもんなんだよ)
アッー!!ww
食後(笑)のシメに冷麺ってネタにしたかったんだ..(え
勢いだけで書きました柏木ファンの方すみません。