幸せ家族 /桐生





 唐突な話しでわるいが、家がいきなり全崩壊していた。


「マジ、 かよ..」


 借り住まいの小さめなアパート。まだ出来たばかりで小綺麗な、外見の見た目ばかりはいい住まい。
 1LDKと中も決して広くはないが、それなりの家賃であり、独りで住む程度なら悪くはない。

 帰ったらまずはシャワーだな、なんてどこぞの独身サラリーマンのような考えをしながら仕事帰りにそんな家へと歩みを進めていると今日はやけに救急車やら消防署やらの煩いサイレンの音がいくつも横切っていき、
 うるさい音に顔をしかめながら、何事かと思っていたら、
 見事なまでに、我が家は真っ赤に燃えていた。
 消防車が見たこともないくらいに家の周りを囲んでいて、それをまた取り囲むように野次馬がたくさん集まっている。
 放火なのかはたまた事故なのか 数十の赤い車が来るほどの、大火事となっていた。

 ああ、これでは確実に一つ一つの部屋も綺麗に燃えカスとなっているはずだ..


 目の前は赤いが、頭の中はこれでもかってくらいに真っ白になった。











「というコトで、 家も財産も失っていたので遅刻しました」
「いや、 遅刻しました。 やないやろ、 大問題やでそれ」
「まあ、 そうですね。 住む家もなければ食費もないわけですし」
「って、 せやから、 なんでそない冷静やねん!」

 スパーン!と真島さんによる見事なまでのツッコミが額に直撃した。

「冷静っていうか、 むしろ意気消沈としているんですよ。 何もかも失ったら、 もう考えんのも面倒にすらなります」
「そうかもしれへんけど、 面倒て.. 自分これからどうするつもりやねん」
「まあ... とりあえず給料日が来るまでどうにもなりませんね」
「どうにもやないやろ、 流石に野宿とかはないやろうし」
「それは絶対にいやですね。 最悪、 知り合いの家にでも泊めてもらうしかないですね.. これも嫌なんですけど」
「誰かの家にのう...... あ、 せや! ほんなら、 桐生チャンに頼んで見るんはどうや?」
「......はい?」
「桐生チャンは孤児院やっとるしな、 あそこなら広いし十分活動出きるやろ。 な?」
「いや、 な? って... あの人の家、 沖縄ですよ。 仕事はどうするんですか」
「そんなん非常事態なんやから、 しゃあないやろ! 休暇もらっとけ、 休暇」

 なんて横暴な。
 完全に相談する相手を間違えた...今更なコトだが。

「じゃあ、 さっそく電話してみよか。 桐生チャンのコトやからそんな事せんでもいきなり訪問したって受け入れてくれるやろうけど... ま、 一応」
「ちょっと、 待って下さい。 誰もその行動をするコトに肯定なんてしてませんよ。 仕事を休暇にしてまでわざわざそんな所に行くなんて馬鹿げてます。 なにより四代目に迷惑でしょうが」
「言うたやろ、 桐生チャンならいきなり訪問したいうても快ーく迎えてくれるて。 大丈夫や、 ワシに任しときい」
「だから、 そういう問題じゃ..」

 駄目だ、この人は一度言ったら絶対に引き下がらない。
 この際通話しようとしてるその携帯をもぎ取ってへし折ってしまえば、
 なんて思いにも及んだが、呼び出し音とともに桐生さんの声が聞こえてきてしまった瞬間逆にその考えがへし折られた。

「お、 桐生チャン! いきなりやけど、 桐生チャンに頼みたいコトがあんねん。 実はのお、 成司の家が火事で燃えてしまってなあ、 帰る場所がなくなってしまったんや!」

 かくかくしかじかで、なんて漫画みたいな表現をする真島さんに、え?と電話越しで桐生さんは驚きの声をあげた。

「そんでな、 今日今から出る飛行機にのせるで、 成司を桐生チャンの家に置いてほしいねん」
「私は了承はしてませんけどね」

 有無を言わさず、良いやろ?と押し付け気味に言う真島さん。
 桐生さんは、来るというコトにではなく、真島さんの横暴な発言に電話越しに困ったような声を出す。
 私が言っているコトでも、行くなんて決めたわけでもないコトを悟っているのだろう。

「なんや、 困ってる成司を見捨てる言うんか? 桐生チャンはそんな奴ちゃうやろ。 ってコトで、 頼んだで桐生チャン! 準備して待っててや!」

 完全なる押し付けである。
 まったくもって返事をする暇のない自分勝手な電話内容だ。
 切られる瞬間、ひどく桐生さんは焦り声をあげていたような気がした。いやあげていた。

「さあて、 じゃあこっちも準備せなあかんな。 服とかも全部燃えてしもたんやろから今から買いに行かなやけど... まあそら南とかにでも任せておけばええやろ。 あと日常品もやな」
「って... 本当に行かせる気ですか、 沖縄に」
「きまっとるやろ、 もちろんや」
「......はあ、」

 さきの不幸とこれからの不幸に不意に大きなため息がでた。

 それから、あたふたと買って来られた服やら日常品やらの入ったバッグを持たされ、空 港に行かされ、面倒なコトが多々あったのは言うまでもない。















まだまだ続きます。
設定的にはOTEのエンド後くらいです。
真島しかいないのは面倒だったからであって大吾を忘れていたとかではない。むしろどっかで集会的なコトしてるんで沖縄行ったの!?って後で驚く感じだと思う。
予想ではあと二回は続きます。
一応これは桐生夢だからね!

最初の短編がこんなかよってもんですみませn


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