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 誤解



名前も知らない恩人が、買い出しに出掛けてから数分後。
見知らぬ部屋に一人残された成司はどうしたものかと気まずそうに辺りをキョロキョロと見回していた。


「...............」

見たところ、普通の..ただの事務所では無いことが分かる風貌の殺風景の部屋。
多分、同業者なんだと思う。
さらに周りを見渡してして、金村工業という名前が目に入った。
......聞いた事のない名前だ。
人の気配がしない事からして、どうやら組長揃ってどこかの集まりにでも行っているようだ。
にしても、流石に組員が一人も..さっきの男性しかいないというのもおかしな気がするが。

「...すぐに帰ってくるだろうか」

ある程度室内を見たところで、ふと自分の着ていた白いYシャツに目をやった。
包帯から染み出てきた血のせいで、綺麗な赤に染まってきている。
どうやら血も止まって来ているようだし、このままにして置くわけにもいかない。
それに、包帯一つを買いに行ったのなら、それほど時間も掛からないだろう。まあ、他にも違うことをしているのなら話は別だが。
とりあえず、気まずかった雰囲気をかき消すように、成司は周りを汚してしまっても困る、とシャツを脱ぎ、ついでに手当てが楽なように包帯も取って彼の帰りを待つ事にした。


と、包帯を全て取り終えた直後、タイミング良く「がちゃり」と音をたてて部屋のドアが勢い良く開いた。

「兄貴!すいません遅くなりました!」

ドアをくぐり、室内へと入って来たのは、待っていた人物ではなく見知らぬ男だった。
真っ赤で派手な服を着た、いかにもチンピラという言葉の似合う印象の男だ。

「ちょうどそこで秋山さんに会ったんで話してたら...って、あれ?兄貴..?てか、え?アンタ..誰だ...?」

赤い服を着た見知らぬ男は成司を見るなり大袈裟なくらいに驚くリアクションをとったあと、警戒するようにしてこちらを睨みつけた。
成司は、そんな彼に対して焦ったように視線を逸らす。

「.........アンタこそ誰だ」
「いや、こっちが聞いてんだけど。なんでこんなところに子供が居んだよ...迷いこんできたのか?」
「....ふざけるな、私は子供じゃない。ここには、ただ男に連れてこられて来ただけだ、迷いこんだわけじゃない」
「連れて..こられ、た?」

成司は、子供だという失礼な発言にムッと眉をひそめた。
一方、相手の男のほうは、成司の発言に先ほどよりもさらに目を丸くして驚いた、というよりは焦りの表情を浮かべた。
「男性に連れて来られた」という言葉を変な意味で誤解をしたのだろう。げんに、今の彼の格好からしたら..まあ、そういう考えに至ってしまうのも無理はないかもしれない。実際は知っての通り怪我をしたから連れて来られただけだ。
言い方はどうあれ、連れて来られたのは事実であり、彼は嘘は付いていない。

「男って、今日は兄貴しかここにはいないはずだし..いや、でも....まさか、兄貴に..そんな趣味が..!?」
「は......?」
「兄貴が..そんな...」
「......アンタ、何か誤解をしてないか..?」
「兄貴もまあ男だし、趣味は人それぞれだとは思うけど、これはちょっと..........って、え?誤解?」

何を勘違いしていたのか、馬鹿みたいにアホみたいにひとりで騒いでいる赤い服の男に、成司は呆れた顔を向けた。




兄貴ショタコン疑惑。
誤解ネタは大好物ですお(*`^ω^)←

組長は死んでる設定で私は書いたんですが、新井が居る矛盾もあるんで結局どっちでもいいです(え
どうせでてこないしね!(←





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