「うおー!かっけー!」
英語の授業でちょっとした映画を観た。始めから終わりまで英語で喋りやがったから、もちろん俺にはさっぱりだった。あのバカップル二人は喜んでいたから、きっと面白い映画だったのだろうとは思う。
「ヒーローが悪人を制裁していく話だったよ!かっけー、ジョナサンかっけー」
俺がジョナサン?という顔をしていると赤司が横から口を挟む。「主人公の名前だ」あ、そう。
あいつは興奮が覚めやらないらしく、映画の名シーンをわざわざ丁寧に解説してくれるが、
「ジョナサンの武器、何だと思う?ハサミだったよ!ハサミ!剣や槍の王道を行かないジョナサンかっけー!」
「悪人に馬乗りになってね、"これ以上、ハルナに近づくな!"って決め台詞とともにハサミを悪人の目ん玉にぶっさすの!ハハ!最高にクールだったぜジョナサン!」
非常に面倒臭いので、適当に聞き流す。「ちなみにハルナとはジョナサンの婚約者だ」という煩わしいだけの補足も右から左へと受け流した。
「私も今日はジョナサンみたいにハサミ持ち歩こっと」
チョキチョキ、とご機嫌なあいつに「また影響されてるな」と赤司は苦笑した。馬鹿みてえ。ジョナサンだか何だか知らねーけどよ、武器がハサミって何かだせえよな。
(鋏を持ってた理由)