雨の日の攻防


あれからおろおろした俺はとりあえず栄坂にココアを買ってやった。するとすぐに落ち着いて、

「ココア好きだよー」

なんてケロッとしたからこいつは確信犯かと思った。



そんなこんなたわいもない話をしていると、栄坂が鞄からふいに折り畳み傘を取り出した。

「あれ、お前傘持ってんじゃん。何で朝濡れてたんだよ」
「これは置き傘だよ」
「ふーん」

それを赤司の下駄箱に入れる。今日は一緒に帰らないのか?と尋ねようとしたけど、こいつらは校内でいちゃつかない主義だったな、そーいえば。と一人納得する。

靴を履き替える栄坂。ぱんつ見えそう。

「じゃ、そろそろ帰るわ。ココアありがと。じゃね」
「え、ちょ」

栄坂は靴を履き替えた後、自分は単身、傘もささずに(栄坂の傘は赤司の下駄箱にある)大雨の中飛び出していってしまった。スクールバッグを頭にのせて。しかし、傘代わりにもなってない。予想もしていなかった行動。思わず俺もそれを追いかける。

「待て待て待て!お前ずぶ濡れじゃねーか」
「青峰もじゃん」
「俺には傘がある!」

そこで俺も思い出したように傘をさした。そして栄坂の方へ。(お前も入れよってことだ)

「いや、いいよ。私入ったら、青峰でかいから濡れちゃう」
「いいから。てか何でお前の傘!」
「赤司、傘持ってないって言ってたから」

至極当然のように言ったから少し拍子抜けした。

「それってお前は濡れてもいいってことかよ?」
「うん。だって赤司が風邪引いたら嫌だもん。寂しくて涙出ちゃう」
「何かそうゆうのっておかしくね?いいから早く入れよ」

無理やり手を引いて傘の中に栄坂を入れる。不可抗力で栄坂の濡れた体が俺にくっついた。(うおっなんかエロ)

栄坂は抵抗しなかった。びっくりしながら「青峰って意外と良い奴だね」と最初は大人しくしてた。そのくせに、なぜか段々もぞもぞしてきた。もぞもぞもぞもぞ…落ち着かねーやつだななんて思っていると、

「…っ!赤司以外と相合傘するのって何か嫌!!」
「へ?」

どん!っとどつかれ思わずよろめく。(え、あれ?)「ごめん!青峰!」と何かを投げつけられ、そして栄坂は再び走っていってしまった。(え、)

「はあ?!なんだよあいつ!!」

となぜかプライドを傷つけられたような気分の俺。投げつけられた何かは、村中に取られたはずの堀北マイちゃん写真集だった。
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