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周りに人がいないことだけが幸いだ。栄坂は肩を震わせて泣いている。立ち尽くす、役立たずな俺。

とりあえず右に行ったり左に行ったり。うろうろうろうろ。自分でも馬鹿みたいに思えて、今度はしゃがんで目線を合わせようと試みる。と、顔を背けられたので結局立ち上がる。再び立ち尽くす、役立たずな俺。



…どーすればいいのか。放っとくわけにもいかんし。

お兄さんが亡くなった?そんな話、一度も聞いたことねえ。だってこいつ、何も言わねーし。これはさつきや黄瀬だって知らねーんじゃないの、下手すれば。

普段のアホ面しか見てなかったら絶対に気づかない。器用に隠していやがった。

(…あの緑間が心配するのも分かるぜ、これは)

なんでこいつばっかりこんな目にあってんだろう。今までどんな気持ちで生きてきたんだろう。全然わかんねえ。



しばらくすると栄坂の嗚咽が止まった。すん、すん、と鼻を啜る音が聞こえた。


「……青峰、」


「…ココア買ってきて」


ずっこけた。


「お願い、」


顔をあげて、しっかりと俺を見て、にひひと栄坂は笑った。

もう平気だよ、と聞こえた。心配かけてごめんね、とも。

真っ赤な目してるくせに。


(…くそっ!…)


でも、

お前がそうしたいというのなら、

俺はそれに騙されてやる。

「待ってろ。逃げんなよ?」
「うん」

自動販売機目指して駆け出す。
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