クレイジーガール わん!


「まなちゃん。赤司君が別れたいって言ってたよ」なんて、脈絡もなく突然言ってみるとまなちゃんは案の定「…え?」と言葉をなくして立ちすくんだ。今頭の中で何考えてるの?とあたしは興奮して胸がきゅうきゅうする。「…うそ、でしょ、」なんて目に涙を溜めながら聞いてくるから「うん。嘘だよ」ってお茶目に笑う。「なっ!」口をぱくぱくさせちゃって、そのお口にあたしの手を突っ込んでむせかえらせたいなぁなんて思う。



ねえ、まなちゃん。あたし体育祭からおかしいの。青峰君のことが好きだったはずなのに今は一日中まなちゃんのことばかり考えてるんだよ。「…どうしたの、南十字さん」なんてあたしにどん引きしながらもそんなこと微塵も出さないように努力しちゃうまなちゃんは優しいね。「あたし、まなちゃんともっと仲良くなりたいなあ。まなちゃんのこともっともっと知りたい」なんて言うと「…私もだよ、南十字さん」なんて引きつった笑顔を見せてくれる。

まなちゃん、あたし、まなちゃんのいろんな表情見たい。怒ってる顔や悲しんでいる顔、恥ずかしがってたり泣いていたり、いろんな顔をあたしだけに見せてほしい。

(だから赤司君が邪魔)

まなちゃんの隣にはあたしがいて、まなちゃんを思いっ切り傷つけた後に態度をコロッと変えて優しく介抱してあげたい。そうやって少しずつ調教したい、なあ。



自動販売機横のベンチに、まなちゃんと赤司君がいた。まなちゃんはココアを飲んでいた。白い紙コップの縁を見ると不自然に茶色い部分が二つあって、二人で飲んだのかな赤司君むかつくって思った。

そうだ。今からちょっとまなちゃん困らせてみよう。赤司君の前だとどんな表情見せてくれるの?恥ずかしがらせるのもいいし、泣かせるのもいい。どんなことしたら一番ダメージを受けてくれるかしらなんて思っているとなぜか赤司君とばっちり目があった。なんで?あそこからここはちょうど死角のはずなのに。いやきっと勘違いに決まっている。そうよいくら赤司君でもあたしが何を企んでいるかなんてわかるはずがない。

そしたら、赤司君は明らかにあたしの目を見つめたままにやりと笑った。いやな予感がした。赤司君はあたしを挑発するようにまなちゃんのあごにつん、と手をあてて自然と上を向いたまなちゃんのそのくちびるに……きゃーー!これ以上あたしに描写させないで!

「どうしたの?学校でキスなんて初めてじゃない」「ちょっと、ね」なんて声が聞こえてきて、赤司君殺すわよと中指を突き立てた。赤司君はそんなあたしにばっちり気づいているみたいでさらに挑発するようにまなちゃんの……きゃーー!!

(むかつくむかつくむかつく)

なんか赤司君には本性ばれてるみたい。それならばこれからはぐいぐい行かせてもらうわよとあたしも赤司君を睨みつけた。
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