ふぅ、と息を吐く。先程までは肩で息をしていたが、木陰に座り込み何度か大きく深呼吸すると、風が心地よく吹いていくのを滲みるように感じる。さわさわと葉の擦れる音も、夢中でボールを蹴っていたときより鮮明に聞き取れた。
風で汗が冷たくなる前に、肩に掛けたタオルで首を拭く。このまま眠ってしまいそうだ。練習の疲れもあいまって、俺の瞼はうつらうつらと重くなっていった。

その時、隣からぐるる、と声がして、猫のように丸まって眠る彼女がもぞりと動く。首の辺りを撫でてやると、片目を開けてちらりとこちらを窺うが、また無愛想に瞼を閉じてしまう。しかしそんな表情とは裏腹に、相変わらずぐるぐると鳴いているのだった。つんけんした奴だ、素直じゃない。そんなに意地を張らずに、もう少し愛想を振り撒けばいいのに、と俺はいつも思うのだ。



「おまえは俺と違って、かわいいんだから。」

「ヴー。」



確かに一見猛獣のような姿形をしているし、視線も鋭いものの、ストリングスのような鳴き声としなやかに歩く気品のある姿、そして野を駆ける勇ましさに、その誰もが魅了されてしまうことだろう。
強さを求めフィールドを走り、力を得る度孤独になった俺とは違う。だからこそ、俺はこいつといられることを嬉しく思う。



彼女の首を撫でる手を止め、空を仰ぐ。木漏れ日をこんなに気持ちよく感じたのは久しぶりだ。雷門でサッカーをするようになってから、こいつと出会ってから、俺の心は何か新しいものに入れ替えられたかのように、色々なものを新鮮に感じることができるようになっていた。
雷門中にいつの間にか住み着いたらしいこいつは、サッカーをする円堂たちや走り回るマネージャー達を遠巻きに見つめているだけで、決して近付こうとしなかったそうだ。それが何故人よりコミュニケーションを取るのが苦手な俺だけになつくのか、聞いても喉で小さく鳴くだけで答えはわからない。



膝の辺りにもぞもぞと違和感を覚え、やっと俺は微睡みの中にいたことに気付く。膝の違和感は隣で眠っていた彼女が原因だった。
俺の膝の上で寝やすい体制を探しているようだ。体の前半分をどっしりと乗せ、丸くなる。どうやらこう眠ることにしたようだ。



「なんだ、かまってほしかったのか?」



思わず笑い声を漏らしながら頭を撫でてやると、片目を開いてこちらを見た彼女は、ふん。と小さく鼻を鳴らしてまた目を閉じてしまった。


◎怪獣と君 提出

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