壱、愛しい貴方の名を詠んだ
「お願いです、夜叉様」
ぐぎ、と首に宛がわれた金属が食い込んだ。三つ葉の家紋の柄と曇天を照り返す刃の異質さ。地獄の底から這い出たような血の香り。そしてこれで私を殺そうとしている男の、哀しげな目。
「・・・駄目だ」
「、何故」
「裏切り者」
男の手に力がこもり、装飾の施された柄が軋んだ。けれど刀身は一向に肉に入らない。
「夜叉様ぁっ・・・」
「・・・裏切り者」
「どうか、どうかどうかお頼み致す、御聞きくださいませえええええッ!」
刹那私の首が血を噴いた。普通はあり得ないだろう、意思に反して斜めにずり落ちる視界。なんて残酷な人。私は、裏切り者なんかじゃ、ない、のに
少女よ、生命が枯渇する音を聞け
愛か罪か、それとも真か