色んな夢を見た気がする。けれど、あまり覚えていない。微かに覚えていたのは、あの、部屋のなか。そして、色鮮やかな朱色の窓枠。そして、その外に見える真っ暗な空。何処にも行けない。牢獄。あの空には、太陽も月も、昇らなかった。

「あ、目ぇ覚めたみてえですぜ」
「おっ!本当だ!」
「……は?」

目を開けると、目の前に二つの顔。片方は可愛い茶髪の少年。もう片方はゴリラに似ていた。

「おい!大丈夫か!」
「だ、大丈夫…です」
「ケガは無いみてえだからな。よかったな!」
「…ここは何処ですか?」

ゆっくり体を起こすと、美少年とゴリラは少し身を引いた。私はまわりをぐるりと見渡す。広いけれど、質素な和室だった。私が居る布団以外には、小さなテーブルしかない。

「真選組の屯所だよ」

美少年とゴリラの背後に立っていた人物が、私の問いに答えた。この声、あのとき助けに来てくれた人だ。

「丸1日寝てたぞ。大丈夫か、あんた」
「お陰様で、ほんと、大丈夫です」

よく見ると、助けに来てくれた彼は、稀にみる男前だった。切れ長の目と通った鼻筋は涼しげで、黒髪によく合っていた。素敵。

「失礼ですが、あなたのお名前は」
「俺か?」
「はい」
「ここで副長やってる、土方だ」
「土方さん…」

布団の上に正座して座って手をつき、深々と頭を下げた。

「このご恩、一生忘れません。本当に、ありがとうございました。あなたのお陰で、私は今此処にいます」
「お、おい。やめろって!」
「そうでさァ。頭を上げなせえ、お嬢さん。こんなマヨラーには勿体無いぜ」
「なんだとてめえ!」
「はっはっは!なに、俺達は警察だ!職務を全うしただけだから気にするな!なあ、トシ!」
「…ああ」

土方さんは、照れ臭そうに頭を掻いた。

「俺は、ここで局長をしてる近藤だ。災難だったな、お嬢さん」
「俺は沖田ってもんです。お嬢さん、お名前は?」

近藤さんと、沖田さんは真っ直ぐな目でこちらを見つめている。土方さんは、まだ照れてそっぽを向いている。本名を名乗るか、少し迷ったけれど、なんとなく、本当の名前で呼んでほしくて、本名を名乗ることにした。

「…なまえと申します」


ラブアンドピース、アンドユー


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