※燐と兄妹設定 やや裏くさい










いつからだっただろう。俺となまえ、ただの兄妹でいられなくなったのは。たぶん、俺達は普通のキョウダイじゃ、ない。

「ただいま」
「おー、おかえり」

ドアが開いたので反射的に顔を向けると、疲れた顔をしたなまえが入ってきた。コートを脱いでハンガーにかけると、俺が寝転んでいるベッドに倒れ込んだ。シングルベッドに二人が寝るのはまあまあ狭くて、肩と肩がぶつかった。

「疲れたあ…」
「お疲れさん。忙しそうだな最近!」
「んー…」

持っていたマンガを閉じて、なまえがいる反対側に置く。うつ伏せになって、布団に顔を埋めているなまえは身動き一つしない。眠いのか。

「おい、メシ…は食って帰るって言ってたな。風呂は?」
「…はいる」

長い髪に触れると、もぞもぞとこっちに寝返りを打つ。疲れた顔が、髪の間からのぞく。頬を撫でるとなまえは嬉しそうに目を細めた。その様子がかわいくて俺がちょっと笑うと、恥ずかしいらしく、今度は俺の胸に顔を埋めた。

「最近、全然帰ってこねえなあ」
「いそがしい」
「…いや、わかってるけどさ」
「ごめん。寂しい?」
「寂しい。たまには、一緒にメシ食いたい」

俺が両腕をその華奢な身体にまわしてぎゅっと抱いてやると、なまえは俺の足に自分の足を絡ませた後、私もだよと言った。なまえのさらさらの髪が首あたりをくすぐる。心地良い。

「燐、明日なにするの」
「休みだし何もねえよ。お前は?なにすんの」
「私もお休みです。なにもないの、久々に」
「お、じゃあメシ何にすっかな」
「ねえ、明日なんにもしないで、ずっとごろごろしてようよ、燐」
「いいよ」

嬉しそうに笑うなまえ。愛しい。俺の、なまえ。

「大好き」
「俺も好き」

ぐっと腕に力を込めると、苦しいと言うなまえ。慌てて腕を緩めると、視線がぶつかった。俺と違う薄茶色の瞳。そして柔らかそうな唇。たまらなくて、やんわり噛み付いた。

「ん、燐」

こいつがすこし口を開くのは、もっとしての合図。俺がまたなまえの柔らかい唇を塞ぐと、ゆるゆると舌が侵入してきた。それを舐めて噛んで吸って、思う存分堪能する。時折漏らす吐息がいやらしい。ようやく解放してやると、なまえは顔を赤くしてうっとりとした表情を浮かべていた。

「燐」
「ん」
「…腰、あたってる」
「………だって久しぶりすぎだろ」
「うー…ごめんなさい」
「いいよ。明日死ぬほど埋め合わせしてもらうからさ」
「うん」
「お前疲れてんだろ。今日はもう寝ろよ。風呂は明日の朝一緒に入りゃいいし」
「やだ」
「え?」

俺の気遣いは、どうやら無駄だったようだ。なまえはネクタイをほどいて、シャツとスカートを脱ぎ捨て、下着姿になると、俺の下半身に手を滑らせた。そして、愛しそうな目で俺を見る。

「こんなになってるのに、このまま眠れるの?」
「う、」
「……燐のすきにして」

我慢できず、なまえの首筋に噛み付く。痣でも作ってやりたい。こいつは俺のもんだって、全世界に大声で知らしめたい。ほのかに血の味がすると同時に、悲鳴にも似た喘ぎ声。こいつの全てが俺に火をつける。俺となまえ、こうなるために生まれてきたような気さえする。ふたりの思いが同じであれば、血のつながりは隔たりになんて、ならなかった。良いのか悪いのかなんて、誰にも何も言われたくない。死ぬほど愛おしい。俺のなまえ。

「燐、燐っ」
「すきだ」
「あっ、ん、」
「なまえ、死ぬほどすき」

名前を呼ばれる度に、触れる度に、胸がぎゅうぎゅうと締め付けられるようだ。離れたくない。一時でも離れていたくない。ずっと俺のなまえだった。だけど、本当は永遠に俺のものになんて、ならないのだ。この接合部から融けて、一つになってしまいたい。まあそんな事、できやしないんだろうけど。


双子





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