寒いですね!! 2012/01/28 19:32 「ん、ひ!? うひゃっ冷たい!」 ウトウトと眠りに落ちかけていた私の意識を浮上させたのは、酷く冷たい彼の手の平だった。勝手に寝てろと部屋から出て行った彼は半宵になって帰ってきた。冷たい体をベッドに押し込み、私を絡め取るように引っ付く。当然のようにパジャマの裾から侵入してきた手の平によって、私のお腹がヒクリと反射的に引っ込んだ。 「ん゛〜」 奴が鬱陶しそうに眉根を寄せるのが分かった。でも、こっちだって安眠サマタげられてるんだからね! 「ファルッ馬鹿ッはなっ、きゃ」 「ウッセェな」 「ウーッ」 イライラした声。少し黙れば再び奴は自分だけ意識を落とそうと脱力した。 「ねむ…」 呑気にも、息を吐くように至福そうな声を上げて、だ! 「ばかばかばか――!」 「…」 スリ、と肩口に寄せる奴の顔に嫌な予感を感じた。ビクッと身を引いた時には奴は私の肩に歯を立てていた。 「ビャッ!」 痛い!てかコイツ噛み癖あるよ!最低!ギリて肉が悲鳴を上げそうになる前、一瞬で終わった鈍い痛み。ジンジンと患部が泣いていた。 そのまま口内から伸ばされた長い舌がベロリと歯形をなぞる。その感覚でさえ、歯形に一気に熱を帯びたように強く自己主張を感じる。ブルリと、背筋が戦慄いた。 「あんだよ、トラになりゃ良いだろ…おれも、そっちのほうが…、抱き心地いい…」 「うぅ、ばかあ」 ギュウと体を丸めて、意識を集中させると、ズズウと自分の体が中から、外から変わっていく。触れていた薄く血の通いの悪い手の平も、比例して冷たさが紛れてきたように思えるんだから、ホウと息をつく。でもその傍ら、スウと冷えた空気が私の胸を通り抜けたような感じがする。微動だにせず、温い、ファルの体温を感じようと必死になった。 「…」 「(ファルは、私がトラの方が良いのかよ…お前をあっためることしか意味が無いのかよォ…、ばか)」 動物になった瞳に涙は流れない。ウルリと瑞々しさだけをたたえた目を目蓋で覆った。 …こんなんにする予定は無かったのですが…。寒いですね!冷たい手を駆使して彼らをちょろっと妄想。ハートフルにならずしょんぼり。まだ生きてまーす。そして潜伏! |