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メリクリ!
2011/12/25 10:14
 毎年早朝に飛び起きていた、心躍るお祝いの日。その当日。
 大きく、小さく揺れるまるで揺りかごのような船の一室、日の光が入るわけでもなくて、完全に意識が目覚めないままに体の側面に感じる熱に擦り寄る。ぼんやりと開けた目の先に、見慣れた青い刺青。緩く顔を上げると、更にボサボサとした無精ひげ。チラリと見えた赤と緑のリボン。梱包された小綺麗な箱の一角が見えた。
「…!」
 バッと、毛布を剥ぎ取り、枕元に座り込む。冷たい外気に触れ、寒いと感じるはずの体は興奮に熱を発しそうだった。小さな指先がその箱を持ち上げる。箱を回転させず、自分で様々な角度から見回し、止まない感動を少し落ち着かせて、リボンに手を掛けた。掛けようとした。
「サンタかい?」突然落ちる声。
「…! マルコ!」
 勢い良く振り向く前に、のし、と背中に厚い胸がくっ付く。彼は確かに私の手元に目を落として、口にうっすらと弧を描いていた。そんなマルコを見たら、一気に興奮が再び戻って来、口を開かずにはいられなくなる。
「マルコ聞いてッ、見て! コレが、朝起きたらコレがあったの! 絶対サンタさんから!」
 ずい、と箱を持ち上げ、肩口から覗く彼に見せる。後ろから私を抱き込んだ彼は、容易に私を持ち上げ、あっと言う間に、組んだ足の間に座らせた。ヘェと声を上げる彼に口がユルユルと緩む。だらしなく笑う私をマルコは頭を撫で、許してくれた。
 首を捻り、斜め後ろの彼の顔を目に留める。変わらずニコリと微笑む彼は目まで笑い、青い、キラキラした目で私を眩しそうに見た。うっすらと開く厚めの唇に視線が吸い込まれる。
「いいこなんだねい」
「ホント!?」
「おめェさんは良い子だよい」
「〜ッ、マルコ!」
 感極まって、彼の逞しい首にすがりつく。キラキラとしたプレゼントをキャッチしてくれたマルコは、そのまま縋る私の背中に手を回し、ゆるゆると撫でる。
「ほら、開けちまいな」
 首に感じるキスのリップ音に、幸せが込み上げた。
 毎年早朝に飛び起きていた、心躍るお祝いの日。霧に覆われた島に、その時の小さく、何時も叶わない望みを待っては裏切られ、落ち込む弱い私は全て置いてきた。それよりも幸せを、望みを私に運んできてくれる人がいるから。

ハッピーメリークリスマス!
by愛鳥週間の二人