(ちょっと部室に用事できたから教室で待っといてください。すぐ済ませて迎えに行くんで)

授業が終わったあとにそんなメールが光くんから来とった。

ミーティングでもあったんやろか?
…でもそれやったら私にも召集かけられるやろうし………

とりあえず待つことにした。今日は部活が休みやから早く帰れると思っとったけど仕方がない。

カタカタと返信メールを送って携帯を閉じると名前を呼ばれた。


「梓捺!」
「蔵ノ介…」
「ちょっと来てや」
「え、…う、うん。」


あれから2ヶ月も経っとったし蔵ノ介と話すことにそこまで抵抗は無くなってきとった。
私を引っ張る蔵之介に「どこ行くん?」と聞いたら「視聴覚室や。あそこはいつも空いとるからな」と返答が来たので光くんに

(ちょっと視聴覚室に行ってくるわ。蔵ノ介が話あるみたいやねん)

と、メールを打っておいた。


(先に帰られたらあれやし、それに…………)


自然と口元が綻ぶ。


(それに、何かあったら光くんが助けに来てくれるやろうしな。)

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放課後、光は帰りの会中に来てた新着メールを開いた。

「タイミング悪いわぁ…」

今日は部活が休みやったからはよ帰れる思うとったから、先輩を自分の家に呼ぼうかなとか考えとった。

せやけど部長から呼び出しや。

(ちょっと今度の大会のことで話しとらんかったことあんねん。放課後部室に来てくれ。)

そんなんいつもやったら謙也先輩が放送で言うことやのに部長から急に収集がかかるんは初めてやった。

そのメールを閉じて新規でメール作成画面を開き梓捺に教室で待っておくようにメールをした。返事はすぐに(わかった。待っとくね!)と来た。

携帯を閉じて早く済ませるためにすぐに部室に向かった。

+-+-+-+-+-+-+

蔵ノ介は視聴覚室につくと梓捺を中に入れてすぐ鍵を閉めた。

「え?…なんで、鍵まで閉めるん?」
「先生に見つかったら面倒くさいやろ?」
「…せやな」

それが本心やと思えへんかった。
閉じ込められた気がして、"俺からは逃げられへんで"って言われとる気がして…怖くなってきた。

「ま、座りぃや」

適当な椅子に座ると向かい側の椅子に蔵ノ介が座った。

「…話ってなんや?」
「自分、財前と付きおうとるんか?」
「…朝謙也が言ってたこと真に受けとったん?」
「ちゃうわ。もっと前から思っとった。2ヶ月前から…財前と一緒に帰るようになったり、放課後財前の家に行ったり、休日も部活帰りに甘味処行ったりたこ焼き食べに行っとったりしとったよなぁ」

しみじみと懐かしむような感じで、あたかも自分がその場にいたかのような口調で話す蔵ノ介。

「ちょ、待ちぃ!なんでそんな細かく知っとるんや!?」

そんなこと。謙也にも周りの友達にも部活の人にも言っとらんことや。知ってるはずがないんに…

「そんなん簡単や。別れてからずっとつけとった。心配やったからなぁ…梓捺が」

にやりとほくそ笑む蔵ノ介を見て寒気が走る。

(ずっと…学校の日も休みの日も部活の後も?毎日見られとったん…?)

全身鳥肌が立った。

「なんでそないなこと…」
「別れたかもしれんけど、自分は俺のもんや。」

近づいてくる蔵ノ介から逃れようと急いで腰を上げ、後ろに下がるが、3歩下がったところで壁にぶつかる。

「私は誰のものでもないわ!」

そう叫んで蔵ノ介を避けて逃げようと走った。
が、

「逃げられるとでも思うとるんか?」
「っつ……!」

右手を思いっきり掴まれ、痛みがはしる。
そちらに意識を取られている一瞬のうちに壁に再び押し付けられる。
今度は頭の左右サイドに手を置かれてもう逃げられなくなった。

「そんなことしたって変わらへん!今、私の心の中に蔵ノ介はおらへんのや!」
「……やっぱり財前か」

ギッとにらんで「悪いか!」と言った。もうどうなってもいい。ただ自分の気持ちに嘘はつきたくない。……私はずっと支えてくれた光くんが好きだ。

「…まぁ、そう言ってるんも今のうちやで」
「どういうことや」
「俺が今から自分を惚れさせたる」
「は?どういう…痛っ!」

背中をしたたかに打ち付けた感覚があった。目を開けると鼻と鼻がくっつくほどの距離に蔵ノ介がいた。

一瞬で自分の状態を理解した。

近くにあった机に押し倒されている。
逃げられない。

「な、なにすんの!離してぇや!」
「嫌や。もう離さへん」

どんどん自分の唇と蔵ノ介の唇が近くなる。頑張って胸板を押すがびくともしない。

(どないしよう!!このままじゃ…)

やっと新しく人を好きになって蔵ノ介のことを忘れられると思っとったのに
光くんのことが…好きやのに

「何しとんのですか!!」

バンっと勢いよく開いた教室のドアのところに立っとったのは
汗をかいて酷く呼吸を乱した財前だった。


宣戦布告
(離さへんからな)


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蔵りんごめんね。悪役で(笑)

遊詩.