あかん。昨日からおかしい。
昨日、いつも通りのテンションで、蔵ノ介と二人で遊園地行ってきた。めちゃくちゃ楽しかった。
でも、観覧車で二人きりになったとき、(なんや…デートみたいやなぁ…)なんて不意に考えてしもうて、身体中が暑くなった。そんで、気をまぎらわそうと外の風景を見よったら、無意識に立ち上がってもうて、当たり前やけど急に立ち上がってもうたからふらついたねん。
そしたら蔵ノ介が助けてくれたんや。まぁ、それは助かったんやけど、そのあとずっと蔵ノ介に後ろから抱きつかれとったんよ。心臓の音が聞こえるんじゃないかってそればっかり気にしよったわ。
まぁ、観覧車から降りたあとは普通に話せたんやけど、観覧車に乗っとるときは心拍数上がりすぎて死ぬか思たわ。
と、ながーい話を眞柚にしたんや。遊びにいくことは前もって話とったんやけどな。
まぁ、ともかくなんで心臓があない激しく脈打ったのか分からへんかったんよ。その理由が知りたかったんや。したら、
『梓捺、それが恋なんやで?』
と言い出した。嘘やろ!?とか言う前にチャイムなってもうて、一人で考え中や。
偶然にも今、四限目の授業は国語。ただただ板書するだけの作業だから好き放題考えれるんやけど…
やっぱ眞柚の言う通りなんやろか?視線が自然に蔵ノ介の方にいってまうんや。ちなみに蔵ノ介もこっちをチラチラ見よる。
…やっぱ私の視線が痛いんかな?
蔵ノ介に嫌われんければええけど。
あー、あの字裸眼じゃみえへんわ。
眼鏡眼鏡…?
なんや、机の中に手紙入っとるな。果たし状やったらどないしよー
〈今日、昼休みに理科室前に来い。〉
…こらあかんわ。
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「眞柚!先に三人でご飯食べといてぇ!用事できたから後から行くわ!」
「はよしぃよ!」
「おん!」
「眞柚ちゃん、梓捺は?」
「知らんけど、慌ててどっか行ったで?」
「…謙也と先に屋上行っててもらえるか?」
「なんや、白石も用事なん?」
「おん、すまんな!」
俺は二人を見送った。
さっきの授業中、気になってチラチラ見てたら梓捺の様子が何か…白い紙を見て、明らかにおかしくなった。
(嫌な予感するわ…)
廊下に立ってたクラスの男子にどっちに行ったかを聞く。
「如月?さっき向こうの階段から上に上がっていったで?」
「わかったわ!おおきに!」
上は特別教室ばかり。先生が呼び出すには場所がおかしい。
嫌な汗が流れた。
周りの人を避けながら階段のほうへと走った。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
梓捺は理科室前まで歩いていった。すると、理科室のドアが空き、腕を引かれる。
「いたっ!」
バタンっ!
室内に引き込められると勢いよくドアが閉められ、その教室内にいた女子5〜6名に囲まれる。
胸の校章の色からして、2年生。
「先輩、何か用ですか?」
とりあえずそう聞いた。すると、一人の先輩がいきなり襟を掴んできた。
「アンタさぁ、白石くんのなんなん!?」
「蔵ノ介は友達ですよ?」
「ほんなら、なんで昨日二人で仲よう手ぇつないで、遊園地いっとったんや?」
「そ、それは…」
思い出した。この人たち、いつもテニス部の練習を見に来てる先輩たちだ。白石くん、かっこいいから狙われてたんだ…
「答ぇえや!」
「答える義務はありません。プライベートのことを詮索される筋合いはありませんから。」
一年生で問題は起こしちゃダメだ。沸き上がってくる怒りや恐いという気持ちを押し殺して、冷静さを装った。
だが、その対応が逆に彼女たちを怒らせる。
「お前何様のつもりや!?」
「それはこっちのセリフです。」
「ふざけんなよ一年がっ!!!あんたと白石くんなんて、釣り合っとらんのが分からんのかっ!?」
(分かっとるわ!!だから思いを伝えられへんねん!!つか、)
「先輩たちこそ、釣り合ってませんよ?」
「なんやと!?」
勢いよく掴みかかってきた先輩が手を振りかざす。
私は為す術なく歯を食いしばった。
バタンっ!
「何しとるんですか!!」
聞きなれた声が聞こえる。目をつむってるから分からないけど多分あの人。助けに来てくれたのかな?
だけど、もう先輩の振り上げた手は止まりそうになかった。
バチンっ!
平手打ちの高い音が響く。だが、なぜか衝撃が来ない。不思議に思い、目を開けるとそこには誰かの背中。
「し、白石くんっ…」
周りの先輩たちが目を見開いている。
「蔵ノ介…?」
「大丈夫か?梓捺」
「お、おん。」
叩いた張本人である先輩が蔵ノ介に近づき、「し、白石くん…」平手打ちが当たった頬へと手を伸ばす。
ぱんっ、
蔵ノ介はその手を弾き返した。
「…なんかこいつが悪いことしたんですか?」
「………」
「先輩たち、することが汚いですわ。」
「…っ!!」
「もうこいつに…俺の彼女に近づかんといてくれます?」
「…………」
「テニス部にも今後一切立ち寄らんといてください。それじゃ、失礼しました。」
私の手を掴むと、黙りこんでいる先輩たちを置いてそそくさとその場を立ち去った。
そしてそのまま階段を下って、スリッパのまま裏庭に連れてこられた。
「くら、のすけ……」
「まず一つ。なんかあったらすぐに相談せぇ。」
「…おん。」
「そして、二つ。よぉ我慢したな?」
「頑張ったんや…」
「最後に、三つ。……ごめんな。」
「な、なんであやまるん…」
優しく抱き締めてくれた彼の背中に両手を回す。堪えていた涙が溢れだした。
「蔵ノ介のせいやないっ!」
「でも、あのメンツやったら、俺関係のことやろ?」
「…せやけど…」
「すまんな…」
「っつ……恐かった…っ!」
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ひとしきり泣いて、落ち着いた後、二人で弁当をもって屋上にいった。
「遅いわ二人ともー!」
「ごめん!私が悪いんよ!」
「いや、梓捺ちゃんは悪くない。どーせ、蔵ノ介のせいやろ?」
((鋭いっ!?))
「そ、そんなことないで?ほら、蔵ノ介!早く弁当食べんと!」
「ダジャレ?」
「ちゃうわ!」
心はある程度スッキリして、残りの昼休みはさっきの出来事を忘れて笑った。
嫉 妬
(そういう関係やない…のに)
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一応言っておきますが、梓捺と蔵ノ介は友達です(笑)
蔵ノ介が自分のことを彼女呼ばわりしたことについて、ヒロインは恐怖で覚えてません(-_-;)
蔵ノ介自身は…まぁ、ね( ´,_ゝ`) プッ
遊詩
完