『遊園地行こか!』
『おん!』


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テストが終わった次の休日。テスト勉強中に約束してた『遊園地』に行くことを実行した。

「蔵ノ介、今日はほんまにありがとな!!」

テストが終わった解放感からだろうか、いつもより笑顔がかわいいと思った。

(まぁ、いつも可愛いんやけどな…)

「梓捺が頑張ったから、ご褒美やで?」

と、頭を撫でると一瞬驚いたような表情を浮かべ、すぐにニコりと笑った。あぁ、ほんま可愛すぎるわ。

「エクスタシーやなぁ…」
「?蔵ノ介?」
「な、なんでもないで!ほら、乗り物行こうか!」

コーヒーカップ、ゴーカートに乗った。久しぶりに小さい頃を思い出した。

(中学の頃は部活ばっかで遊園地とかいかへんかったからなぁ…)

「おっしゃ!次は何に乗りたいんや?」
「メリーゴーランド!!」
「ほな、行こか!」
「乗り場まで競争や!」
「あ、ズルい蔵ノ介!フライング!!」

駆け込むように二人でメリーゴーランドに行き、馬車に乗る。まだ動くまで2分かかるというアナウンスが流れていたので携帯を取りだし、「写真撮らへんか?」と梓捺に聞くと元気な声で「おん!」と、答えてくれた。

肩組んだりしようかと思ったけど、顔を近づけるだけで精一杯だった。

「いぇーい!」
「はい、バター!」
「バt…チーズやろ!!」

パシャっ

(なんや、ノリツッコミがうまなってきたな。) 

「あ!そういえばね、メリーゴーランドの馬車に恋人と乗ると、ずっとこの乗り物に乗ってる時の幸せさでおれるんやて!」
「そ、そうなんか」
「まずはお互い、恋人を作るところからやらなあかんな?」

と、笑う梓捺に「せやな」と苦笑いを浮かべる。

(せやかて、彼女やったら梓捺以外考えられへんのやけど…)

始めて出会った日から他の女子とは違うと思った。

俺と話してるときと眞柚ちゃんと話してるときと声のトーン変わらん。まずそんな子がおらんかったさかい、新鮮やった。

だから、高校で仲ようなれそうやなと思った。

部活も今は同じで幸せや。毎日一緒に帰れるし

テスト勉強も家に呼べるからな、しかもずっと二人きりやし。

テストが終わったら、もうしばらくは家に呼べへんのか…と、寂しく感じた。

そう考えたら、『あれ…俺、梓捺のこと好きなんかな』と思った。

人を好きになったことはないから、本当にこれが『好き』という気持ちなのか分からないけど…

これがそういう気持ちやないんやったら、『好き』なんて気持ちが永遠に感じられへんやろな

なんておもった。

やっぱり、俺は梓捺のこと…ヤバいくらい好きやなぁ。

そんな長い考え事をしていると、額にひんやりとした心地よい感触があたった。

「梓捺?」
「蔵ノ介が急に黙りこんだから…具合でも悪いんか思て…」
「大丈夫や、ありがとな?」 

と、額に当てられた手を剥がし、そのまま握る。

「ずっと、手ぇつないどってええか?」
「?…ええで!」

自分よりも小さい手をそっと握る。これからもそばにいたいと、守りたいと思った。


…そんな一部始終を見られているとも知らずに。

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ほとんどの乗り物にのり、時刻も夕方になっていた。

「そろそろ最後やな。」
「せやな、やっぱ締めは観覧車やろ!」

ワクワクした顔で観覧車を指差す。

「わかった!いこか!」

俺達は、観覧車に乗りに行った。

「足元気ぃつけぇよ?」
「おん!…っと」
 
二人で向かい合わせるように座り景色を見る。

「ちょっと暗なってきたから、ネオンがきれいやな?」
「せやな…」

夜景に釘付けになっている梓捺の顔を見る。

今日もこれで最後かと思うと寂しかった。学校が始まるとなかなか二人きりという訳にはいかない。夏休みがくるが、部活が入るだろうからなかなか期待できそうにもない。

(って、付きおうてるわけでもないのに、なに考えとんのや俺は…)

自嘲していると、梓捺が席をたち、景色を見始めた。

「あ、コラ!立つと危ないで?」
「うわっ!」

ドジやなぁ…と、思いつつフラついた梓捺の腰を座ったまま引き寄せ、自分の膝に座らせた。

「よっと、…ほら、言わんこっちゃない」
「ごめんなさい…もう大丈夫だから、放して?」
「いやや。このままでいさせてもらうわ。」
「え、ちょ…ホンマに?」
「ホンマや。」 

両手を梓捺のお腹にまわし、抱き締める。本当は抱き締めたかっただけとは絶対に言わない。

観覧車が回りきるまで、二人とも無言だったのは言うまでもない。

無 言
(でも、居心地は良かった)

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言葉には出せなくても、行動にはでてしまう。
いいな(笑)

遊詩


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