「本当に悪ィ!今度メシ奢る!」
「絶対だからなぁっ!」

またもや走り去る男子を見送る。
自分の手元に残る書類を見ながら、自分ってゲンキンだなぁと、我ながら思う。

その日は友達の方に用事があったので私はそのまま応接室に向かおうとした。

が、クラスの女子が「如月さん。ちょっといい?」と、話しかけてきた。

その子たち(四人組)は、あまり話さない部類の人だった。言い方が悪いが、チャラチャラしているような、自分を凄く可愛いと思っているような(まぁ、確かに見た目はかわいい)、性格に難アリの子達なので、私は苦手だった。

が、そんなことを言うわけもなく笑顔で接した。

「いいよー、何?」
「今から雲雀さんの所に行くの?」

別に隠す必要もないと思い

「うん。プリント届けるの頼まれてさぁ…」

そういうと彼女達から急に笑顔が消えて

「マジそういうの止めてくんない?」

と、いつもの高い声とは一変して低めの声で言われた。

始めて、人に対して、恐怖した瞬間だった。

「な、にを…?」

勇気を振り絞ってそう聞くと、「は?」と笑われる。

「そこまで言わないと分からないのォ?雲雀さんの所に行くのをよ!私達が行くからソレ渡して?」

ニコリと、恐い笑顔を向けられる。
普通なら渡してしまうのだろうが、なにを考えたのか

「嫌だ。」

と、言ってしまった。雲雀さんに他の女子と関わってほしくないと思った。理由はわからないけど…他の女子と話しているところを想像すると涙が出そうになって、無償に嫌だった。

ファイルに入れられたプリントを胸の前で大事に抱えるように握ると、その行動が女子達を余計に怒らせた。

「はぁ!?ふざけんじゃないわよ!私はあの人が好きなの!知ってるでしょ!?」

確かにクラスで「今日、雲雀さん見たの!」と、騒いでいるのを聞いた気がする。

「別にあなたはあの人のことどうとも思ってないんでしょ!?じゃあ良いじゃない!」

パンっ!

と、乾いた音が響く。
叩かれていた。
急なことで反応できなかった私は近くの机や椅子にぶつかった。
ファイルも落としてしまった。

女子達の一人がソレを拾い、雲雀さんを好きだと言っていた女子に手渡した。

「これからは私が行くから。じゃあね?梓捺さん」

バンッと、荒々しく閉められた扉を見つめる。
立ち上がって直ぐにでも追いかけたかったが、頭をぶつけたらしくすぐには立てそうになかった。