「やっぱ待ってたかー。ぴゅー」

こちら側を鋭い目付きで睨み付けてくる番犬。
その番犬がどう攻撃してくるか少しの間様子を伺っていると、突拍子もなく口から炎を吐き出した。

それぞれ何とかその攻撃を交わしたが、万が一本に火がついたら燃えて消えてしまう。

「小狼!」
「大丈夫だ!それより本が…!」

次々と番犬の口から吐き出される炎。
それは無論周りの本棚や本にもかかっているのだが、全く燃えていない。

「本は全然こげてないよ!」
「本を守る為の番犬さんだからねぇ。攻撃魔術も本には効かないようにしてあるんだよー」
「…良かった」
「小狼ホントに本好きなんだね!」

回避しながらも会話を続けるファイたち。
対して名前と黒鋼は無言のまま番犬から繰り出される攻撃を避けていく。

「まんじゅう!刀出せるか!?」
「駄目!出ないー!」
「ぴゅー。武器にも防除魔法有効かー」
「小狼君!下からなら攻撃出来る!」
「小僧!足!!」

名前と黒鋼の言葉に直ぐ様反応し、「はい!」と言い番犬の方へ駆け出す小狼。
そして思い切り番犬の足に両足で蹴りを咬ました。

「今のうちだ!走れ!」
「あっ、向こうに出口が!」
「外だ!行くぞ!」

目前の出口を目指して全力を振り絞って逃げる四人。
だが、出口と思われたその先に広がっていたのは図書館の外ではなく荒れた海。

「道が海みたくなっちゃってる!」
「飛び込むぞ」
「黒鋼待って」

名前がそう口にすると、ファイが自分の被っていた帽子を海に放り投げた。

「溶けた!」
「これも防除魔法だよ」
「きゃー!後ろに番犬さん来てるよ!」
「私魔方陣出せる!」

そう言い彼女が魔方陣を出すため防除魔法の効かない空間を作り出そうとした瞬間、思い切りファイが肩を掴んで名前の動きを止めに入る。
さらに同時に口笛を吹いた。

「ファイ…!その口笛!」
「ご名答ー。正解だよ。モコナ、次元移動を」
「でも魔方陣が」
「この中なら大丈夫だよー」
「…出たよ、魔方陣!」

そう言ってモコナが皆を吸い込むと、彼らは辛うじて逃げ出すことに成功した。

今まで旅をしてきて長い時間が流れている。
しかし初めてファイは魔法を使った。あれだけ使わないと心に決めていた彼がだ。

三人が驚いてファイを見詰めると、彼は無表情で瞳を伏せている。

(ファイが魔法を…)

何故なのかと疑問が頭を駆け巡る。
けれども名前と同様にファイにも彼女に対する強い疑問があった。

(さっきの治癒魔法…)

魔法を使えば使う程寿命が縮むはずだ。
それが理由で彼女は今まで魔法を使わ
ないでいたのに何故突然にそうしたのか。

同じ疑問をお互いに抱きながらも、やはりどちらもそれを尋ねることが出来ないでいた。



To be continued...



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