先程から円堂はご機嫌斜めだ。鈍感な風丸も気付く程、その様子はわかりやすいものだった。
部活へ急ぐ者、帰宅へ急ぐ者、友達と喋っている者で賑わっている中、円堂はぶすっとしながら歩みを進めている。どうにも声が話しやすい雰囲気ではない。風丸は円堂を横目で見ては正面を見直したりとせわしなく目線を移動させた。風丸はスカートの裾をぎゅっと握り、円堂を見据えた。


「なあ、なんで機嫌…悪いんだ?」


円堂は未だにぶすっと頬を膨らませたままだ。風丸は念押しをするように「なあ」と言った。すると、円堂は急に歩みを止めた。風丸は円堂と向き合う形で立ち止まった。


「風丸」
「なんだ?」
「その…スカート…短くした?」


「はあ?」風丸は呆けた声をもらした。よく意味がわからない、そう感じたからだ。しかし思考を巡らせると、確かに今日の休み時間にほんの少しだけスカートを短くした。もちろん自分からでは無く、無理矢理短くされたのた。「風丸は足が綺麗なんだから短くしなよ!」と。短くした直後は違和感があったものの、時間が経った今は慣れてしまっていたため、今の今までその記憶を頭のすみに置き去りにしていた。


「まあ短くしたっつうか…されたけど…それがどうしたんだ?」


スカートを短くしたことと円堂が不機嫌であることの関連性がわからない風丸は円堂に問いかけた。円堂は「えっと…」と顔を赤くさせて口ごもらせた。風丸は顔を傾げた。


「スカート短くすると、その…見られるだろ」
「何が?」
「…太ももとか、足…」


風丸は一瞬、固まった。その後、ぼふっと音がつきそうなくらい顔を真っ赤にさせた。何となく意味がわかったが、風丸はあえて「見られて…円堂は困るのか?」と再び問いかけた。円堂は目を見開いた後俺を睨んで「わかってるくせに…!」と言った。


「わかんないから聞いてるんだよ!」
「……か、風丸の足、他の男子に見られたくないんだよ!」


騒がしかった廊下が一斉に静まり返り、風丸の顔はさらに真っ赤になり、鼻の上にうっすらと汗をかいた。


「こ、こんな所で言うなよ!」
「き、聞いたのはそっちだろ!?」


うっ、と風丸は言葉に詰まった。円堂はじっと風丸を睨み


「今日から勝手にスカート短くするの禁止!」

人差し指を突きつけてそう言った後、ずんずんと廊下を大股で歩いて行った。風丸も真っ赤な顔を手で隠しながら、円堂のあとを追いかけた。


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