※鬼道・佐久間・不動は
 同じ中学校に通っています


「不動、乗せろ」
「……………………ハァ?」

土曜日の正午過ぎ、
部活が終わって帰ろうと自転車に跨ると
佐久間にそんなことを言われた。
意味わかんねー。

「部活で疲れた。だから自転車に乗せろ」
「…いやいや、これ俺が乗んだよ」
「後ろに乗る」

なるほど、二人乗りということか。
返事は決まっている。

「無理」
「何故だ!!」
「つーかお前鬼道と帰らなくていいのかよ」

俺は鬼道がいる場所へ目を向けた。
まだ帰っておらず、チームメイトと仲良く談議中だ。

「たまには寂しい寂しいお前と
一緒に帰ってやると言ってるんだ」
「…ハァァ?余計なお世話だよ」

俺は自転車に跨ってペダルを踏んだ。
しかし、進まない。
後ろを振り向くと、荷台の所を
佐久間によってしっかりと掴まれていた。

「…離せよ」
「断る。乗せろ」
「つか二人乗りしたらサツくんじゃん」

万が一見つかったら
きっとうるさく言われるに違いない。

「不動っていつも二人乗りとか
平気でしそうなイメージがあった」
「しねーよ」
「あ、する人がいなかったな。
そりゃすまん」
佐久間は嫌味を含ませて
「ぷっ」と笑った。

「うるせえ!黙れ!」
「黙るから乗せろ」

俺は眉間に皺を寄せた。



「不動、ケツが痛いぞ」
「じゃあ降りろ」

佐久間は俺の後ろで
さっきからぎゃあぎゃあと騒いでいる。

「…風も気持ちいいし
空も綺麗でいいな」
「そうかよ」
「……なあ、不動」
「何だよ」

背中に重みを感じた。

「俺がこんなに我が儘言えるの
お前だけだからな」

車があまり通らない道だから
その声はよく通り、耳に届いた。

「…どういう意味だよ」
「だから、その……自分で考えろ」

何だよそれ。
まあ考える気はねーけど。

俺は佐久間にわからないように
静かに微笑んだ。

(そのくれー信頼してるってことだろ)
「(そのくらい信頼してるってことだ)」




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