俺は鉄塔広場にある木の裏で
待ち伏せをしていた。

息を潜めていると
案の定円堂と木野が来た。
バクバク、と心拍数異常な心臓を
落ち着かせようと胸に手を添えた。

(しかし、円堂が来る場所がわかるなんて)

フッと俺は小さく笑った。



2人が話し始めたが
会話はよく聞こえない。
口論にはなっていないようだが
言い合いが起きているようだ。

すると、円堂が頭を下げた。
木野は目を見開いて驚いている。
円堂に頭を上げるようなことを
ジェスチャーですると
木野は申し訳無さそうな顔で
一言二言言っているようだ。

どうやら仲直りしたらしい。

自分の心の中に
舌打ちする自分と
安堵している自分がいた。

一瞬目を伏せ
また顔を上げると





2人は抱き合っていた。




当然だ。
2人はカップルなのだ。

裏腹に腹の中では
憎しみと嫉妬心が
煮えくり返っている。






ぷちり。






また何かが切れた音がした。

2人はゆっくりと離れ
手を繋ぎ、仲むつまじく階段へ向かって歩き出した。

俺は気づかれないよう、
物音や足音を立てずに
木野の背後に回り、
手を伸ばした。

このまま手を伸ばしたら
きっと派手に階段から落ちるだろう。

結構段があるから
死んじゃうだろうなあ。

そんな残酷なことを
冷静に考える自分に
恐怖に怯える自分もいた。



後数センチ、
でも手を伸ばすことは出来なかった。

(何を、馬鹿なことを)

(人を殺すなんて…)

狂った俺にはまだ理性があるようだ。
なんとか思いとどまると
よろめいてしまい、
ジャリ、と足音がなってしまった。

「……………!」
「あ、風丸じゃねーか」

必然的に円堂と木野は気づき
俺の方へ振り向いた。

「よ、よお、奇遇だな。
仲直りしたんだな」
「ああ!風丸のおかげだ!!
…あ、秋、こいつ風丸一郎太」

そう言って
木野に目線を戻し
俺を紹介し始めた。

「俺の友だち!!」

あ。

ぷちり。

また切れた音がした。

「………俺は、円堂の友達といわれる資格はない」

耐えきれず、ぽつりと呟いた。

円堂と木野は目を見開いている。

「俺、円堂のことが好きなんだ」

円堂の大きくて黒い目が
更に見開かれて大きくなった。

もう、後戻り出来ない。

更に俺は"告白"をした。

「好きで好きでたまらなくて、
木野が憎かった。
一瞬木野を殺そうと思ったよ」

木野の肩がびくりと揺れた。
円堂は呆けているようだ。

「でもつき落とせなかったよ」

そう言いながら
俺は階段から少し離れたところへ移動した。






「悪人に、なりきれなかったんだ」






俺は助走をつけて

勢い良く飛び降り、

頭を強く打った。



そして、俺は
意識もいのちも手放した。



さよなら、円堂。

ごめんなさい。


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