中学一年生になり、
陸上部に入部してたら
八ヶ月が経った。

先輩が引退してからも
二年生の先輩が引っ張ってくれ
俺もメキメキと実力を伸ばしていった。

走ることが楽しい。
部活も楽しい。
俺は今を最高に楽しんでいた。



「ありがとうございましたー」

この日の部活が
ようやく終了した。

最近は肌寒さもより一層厳しくなり
正直キツい。

走っていれば多少は暖かくなるが
やはり冬の寒さには勝てない。

「さよならー」
「お、風丸早いな。
また明日」
「はい、さよなら」

先輩たちに挨拶をし
一人部室を出た。

巻いた水色のマフラーを揺らしながら
一人で帰宅路を歩くと
色々なことを考えてしまう。

俺は一つの事実を思い浮かべた。

円堂と、もう何週間も話していない。

そういえばいつからだろうか。
以前は一緒に帰る習慣も
いつの間にか無くなっていた。

幼い頃からいつでも一緒だった円堂と
中学、別のクラスになり
別の部活に入った。

円堂と違う道を歩いてみたくて。
ただそんな好奇心だった。

だが、実際歩んでみると
円堂の背中はどんどん小さくなっていき
声も手も届かなくたっていった。



見知らぬ誰かと共に歩み
俺の方なんて少しも振り向かない。



俺は自分が行った行為について
ようやくわかった。

違う道というのは、
共に過ごさないこと。
干渉しないことだった。


だが俺はそれでも同じ道を歩もうとはしなかった。
今の道でも満足はしていたし、
今更…と理由をつけていた。



そんなことを思考しながら
家までの道を歩いていると
話し声が聞こえた。

「でさー、あのボール
中々止められねーんだよ!」
「速いよなーさすが先輩だよな」

(あの声は…円堂だ!)

俺は声のする方へ
走って向かった。

少しずつ声が近くなる。
「えん…………」

どう、と言おうとしたが
その続きを言うことはなかった。

「あのシュート、
いつか止めてやるんだ!」


近くにいるのに、
遠くに感じた。

(……………えん、どう………)

声をかければ
きっと振り向くだろう。
でも俺は出来なかった。



もうこの手が
円堂に届くことはないだろう。



そう感じると
俺は元来た道を戻り始めた。

頬に流れた
一滴の涙の意味も分からずに。


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