今日、イナズマキャラバンを抜けた。

新幹線に揺られて何時間か経った後、懐かしい稲妻町に降り立った。お尻がまだひりひりするが、構わず歩きだして駅を後にする。
駅を出ればそこは見慣れた風景ばかり。人が少ないせいか、ちょっとだけ殺風景で、さびしいという印象を受けた。俺はひとつ大きな深呼吸を行った。口から吸い込んだ空気は冷たくて、故郷の味がした。

「ただいま」

俺は夕暮れの町で、ぽつりとそう呟いた。
よいしょ、と肩に提げていた大きなかばんを持ちなおした。

俺は歩きながら今までのことを走馬灯のように思い出した。最初に円堂に勧誘されたこと。帝国学園と戦ったこと。フットボールフロンティアに出場して、優勝できたこと。そしてエイリア学園の襲撃。恐ろしいスピード、力。どれをとっても俺がエイリア学園のやつらに勝てるところなんて無かった。抗っても、抗っても、敵わなかった。

「…円堂には、悪いことしちまったな」

俺を何度も励ましてくれた円堂の声、顔を思い出す。まだ1日ぐらいしか経っていないのに、もうずいぶん昔のことのように思えてくる。円堂は今、どうしているのだろうか。ちゃんと朝起きれているだろうか。練習できているだろうか。ご飯食べているだろうか。寝ているだろうか。あれ、おかしいな。なんで円堂しか頭に出てこないんだろうな。あれ、おかしいな。地面がよく見えないや。

俺は立ち止まって見た。立ち止まって瞬きを繰り返すと、少しだけ視界がクリアになり、地面の上に小さな水たまりが出来ていることに気付いた。なんで出来ているんだろうな。おかしいよな。雨とか降ってないのに。その時、俺は頬に液体が付着していることに気がついた。涙、だった。

「……え?」

なんで泣いているんだ、俺?自分に泣く資格なんて無いのに。ない、のに。でもぬぐっても、ぬぐっても、涙は溢れる。
止まらない。
止まらない。
止まらない。

「ちくしょう…」

俺は涙をぬぐいながらまた歩き出した。それでも地面に小さな水たまりは増えていく。まるで足跡みたいに、増えていく。
最低な野郎だ、自分は。円堂の方が傷ついた。俺が傷つけた。俺が泣くなんて、そんなの、駄目だ。そう言い聞かせてもやはり涙は止まらない。水たまりは増えていく。このまま俺の涙で町が沈没してしまうんじゃないか、そのくらい、増えていく。
最低だと思う。
でも、会いたいよ。

「円堂、」


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