※捏造あり



まるで君は太陽だ、と。君を見る度に思う。小麦色の肌も明るい笑顔もハキハキとした声も、
全てが僕には輝いてみえて思わず目を瞑ってしまう。そんな僕に君は「なにしてるんだよ、早く行こうぜ!」と話し掛けて手をひいて行くのだ。まるで僕と、

「正反対」
「え、なにが?」
「いや、なにも」

不思議そうな顔で僕の顔を覗き込むも「まあいっか」という風にすぐさま目の前の釣り竿に目線を戻した。
今日も今日とて、一週間で唯一の休日を彼、浜野くんと過ごしている。ちなみに魚が釣れているかどうかについては、ノーコメントだ。では何故貴重な休みを彼と釣りをして過ごしているか?答えは「わからない」だ。というものの始めは断わりづらかっただけかもしれない。あまりにも暇なので、回想してみることにする。



それはまだ入学したてでサッカー部にはまだ入部してない頃。入学式を終え中学生としての初めての日曜日を迎えた。といっても僕はまだ友達とか居なくて、暇を持て余すだけだった。あまりにも暇で僕は近くのレンタルビデオ店に足を運んだ。その帰りだ、彼と会ってしまったのは。

『あれっ?速水?』
『へ?そ、そうですけど…』
『オレ、同じクラスの浜野だよ!』

そこでようやく、僕は思い出した。そういえば入学式の時隣に座っていてやけにハイテンションで明るかった男の子が居た。クラスでの席も前だった。確かにこんな顔だったと思う。適当に相槌を打った。というかこの時点で既に嫌な予感がしていた。

『覚えてくれてたんだなー!あっちゅーか今暇?』
『えっあっまあ…』
『じゃあ釣り行かね!?この近くなんだけどさー』

このとき僕は『えっえっ』としか声を出すことしか出来なかった。もちろん断わりたいが、断りづらいし、断るのにも勇気が要る。肯定も否定も出来ず黙っていると『じゃーおっけーってことで!行こーぜ!』と運悪く肯定に思われたらしく、手を引っ張られてどんどん前を歩いて行く。この間にも断ることは出来ず、諦めて彼に付き合うことにした。
しばらくすると小さな釣り場に着き、定位置らしき椅子に彼はどかっと座り込んだ。そして彼は自分の右隣を手のひらで叩き『まーとりあえず座りなって!』と満面の笑みで言った。大人しく言われた通りその隣の椅子に座った。ちなみに他に釣りに来ている人はいなく、辺りは静かだ。

『あっこれ速水の釣り竿な』
『えっあ、はあ…』

それから釣りの仕方などをレクチャーされつつ、会話をする。ネガティブで話すことがあまり得意ではない僕に対して彼はポジティブでどんどん話し掛けてくる。正反対ってこういうことなのだろう、と頭の隅で考える。ふと会話が途切れて、さっきまで抱えていた疑問を口にした。

『よく…僕のことわかりましたね』
『へ?どーゆーこと?』
『だって話したこともなくてまだ1日だけしか見たことないのに、名前まで覚えてたから…』
『あーそれはさ、お前と友達になりたいなって思ったからつい覚えちゃったんだ!』

僕と?それは何かの間違いなのではないだろうか。僕と友達になりたいって言う人なんて、そんなのいるわけないのに。

『ほんとだからな!』

まるで僕の心を見透かしたかのように、言葉を付き足した。思わず彼の顔を見ると、そこには眩しい笑顔があった。まるで、太陽のような。もっと知りたい、そんな感情が底から溢れてくる。僕は何時の間にかこんな質問をしていた。

『浜野くんは、何部に入るんですか?』

まだ眩しくて、手の届かない太陽のような彼に、届きたい。そしていつか隣で、走っていたい。彼と。

『んーサッカー部とか楽しそうじゃね?』

そしていつか彼と、



「速水?」

呼ばれた声で僕はハッとし、顔を上げた。彼の心配そうな顔が目に映る。「大丈夫かぁ?」という間伸びた声。

何故貴重な休みを彼と釣りをして過ごしているか?という問いの答えは未だに「わからない」のまま。でもきっといつか、わかる気がする。
僕は笑みを浮かべながら「大丈夫ですよ、浜野くん」と言った。



title:彼女の為に泣いた




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