オレは嗚咽をしながら罪悪感と不安に駆られていた。目頭は熱さを帯びたままで、涙は未だにぽろぽろと零れ落ちる。
「また泣いてるのか?」
頭上から降ってきた声を聞いてオレは顔を上げた。やっぱり。そこにいたのは霧野だった。
「もうキャプテンになってから数週間は経つよ?」
「…また今日も、失敗した」
「人間失敗して当たり前だって」
「………」
オレは何も言わずに俯いた。また一粒涙が頬を伝う。また今日も目が腫れるんだな、と頭の隅で思う。
「あーっ!もう!わかったわかった!」
霧野は唐突に叫ぶとオレを抱きしめた。「ほら、これでいいんだろ?」そう言って霧野はオレの背中を優しく叩いた。
キャプテンになってから毎日のように泣いてるオレに、最初は霧野もうろたえていた。でも今じゃ慣れっこで、いつもオレを抱きしめて慰めてくれる。それが何だかとても嬉しくて暖かくて、何時の間にか泣き止んでいる。それからオレが泣いたら霧野は抱きしめてくれるようになった。
もちろん、二人きりのときだけだが。
「落ち着いた?」
「...まだ、かな」
そしてオレは霧野の汗が染みたユニフォームを掴んだ。
オレはとっくに落ち着いていた。涙はもう落ちることは無い。ただ、まだ霧野の腕の中に居たくて、嘘をついた。
霧野の心臓の音に耳を澄ます。今日もだ、今日も。
霧野の鼓動は、普通の人よりもちょっと速い気がする。ちょっとランニングした後ぐらいの鼓動の速さ。最初はちょっとびっくりしたけど、今じゃこの鼓動の速さは心地良いに変わっていった。
気持ちいいな。
そう、素直に思った。
オレはまだこの鼓動の速さの意味も、
この心地良さの意味もわからなかった。