あれから。
円堂と風丸はハッピーエンドというように再び結ばれたわけだが。イチャイチャしている時間はあまり無かった。
夏休みがようやく始まったと思ったら今度は部活三昧。何故ならば夏の大会があるからだ。もちろん監督も先輩方もいつも以上のやる気を見せる。おかげで朝から夕方までみっちり特訓だ。そのせいでへとへとになるほど疲れ、精魂も尽きてしまった。
だがそんな地獄の日々の合間にも楽しいイベントが訪れる。それは、

「花火大会?」
「おう!なあ風丸、見に行こうぜ!」

部活の休憩時間、突然言い出す円堂。そういえば今日はいなずま花火大会だった。部活のせいですっかり忘れていた。そういえば毎年行ってたっけ。風丸は「いいぜ」とあっさり承諾した。ガッツポーズをする円堂を、風丸は笑って眺めた。



「おい、遅いぞ」

ごめん!というように手を合わせる円堂の前に立ち、怒りのオーラを漂わせているのは風丸だ。それも着物姿。新鮮でしかも男とは思えないほど綺麗なので怒られていることをつい忘れて見惚れてしまった。

「おい、聞いてんのか!?」

眉間に皺を寄せた風丸が円堂にずずいっと顔を寄せる。思わず円堂は後ずさった。
何故風丸がこんなにも怒りに満ちているか、それは円堂の遅刻による。10分もこの暑さの中待たされたらそれは怒るに決まっている。でも風丸はもう気が済んだのか「もういいから、さっさと行こうぜ」と円堂の手を引っ張った。その手は少し汗ばんでいたけど、何故か苦にならなかった。

円堂いわく「絶景ポイント」があるらしい。まあある程度の予想はついていたが、いつもの特訓場だった。ベンチに座り、すでに始まっている花火を見上げる。色とりどりの花火が夜空に咲き誇っていた。

お互い無言になり、色んなことが頭を巡った。思えば夏休み前、少しいびつではあるが三角関係が出来上がっていたときのことを考える。あの時は、いや別れたときから二人でこうして花火大会に来れるなんて思いもしなかった。円堂も、風丸も。

「へへ、俺って幸せ者だな」
「…なんだよ突然」
「なんでもねーよ!」

円堂は満面の笑みで風丸に抱きつく。「うおっ」と声と共に顔は真っ赤に染まっていく風丸。そんなことお構いなしに頭をぐりぐりと擦り付け「俺、やっぱり幸せ者だよ」と改めて言った。そうだ、俺は幸せ者だ。だからこの一瞬さえも大切にしなきゃいけない。円堂はそう思った。

「…俺もだよ」

花火にかき消されそうなくらい、小さな声でそう呟いた。円堂は「なに?」と残念ながら聞こえなかったらしく聞き返したが、風丸は「なんでもない」とはぐらかえす。

「なあ、」
「ん?」
「来年も見ような、花火」

月と花火に照らされながらそう言った風丸はとても綺麗で、円堂は目をまん丸にして見開いた。そしてニカッと歯を見せ、「おう!」と一層強く抱き締めた。

17番目の夏も、君と。


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