あれから。

俺と風丸は大学生、それも二年生になった。あれから約6年が経った。数字にすると大分経っているのにとても短かったように感じる。それはきっと風丸とずっと居たからだと思う。
季節は冬。もう寒くなってきて、炬燵が欲しくなってくる気温だ。といっても暖房がきいているので快適に大学の課題をこなす。さすがに二年生にもなるとだんだん慣れてくるようだ。といっても前から勉強は苦手だったから面倒なのは変わりないのだけれど。
ふと、時計を横目で見た。既に針は11時を指している。どうも風丸の帰りが遅い。

風丸は7時くらいから緑川と飲みに行ったらしい。俺も誘われたのだがちょうどバイトで行くことが出来なかった。3時間の予定で、さすがにそんなに長く飲めるほど風丸は強くないから断念したのだが…すでに飲みに行ってから4時間が経過しているがそんなに盛り上がっているのだろうか?俺も行けば良かった、畜生。


「ただいま〜!」

がちゃりと、重々しい扉が開く音がした後に今までに何度か聞いたことのある陽気な風丸の声が聞こえた。ああこれはかなり酔ってるな…と思いながら玄関まで迎えに行く。そこには顔を真っ赤にして緩んだ笑顔を浮かばせている風丸が座り込んでいた。「おいこら起きろ」と言いながら風丸の腕を掴んだ。

「はいはーい」と言いながら風丸は立ち上がり、歩き出した。…が、その歩みはおぼつかない。三歩目で頭から壁にぶつかっていった。「ほら気をつけろ」「あーい」正直酔っている風丸はかなり面倒くさい。こうやってリビングまで連れて行くのにも苦労する。ようやくリビングに辿りついて風丸を座らせると水を手渡す。

「そんなに盛り上がったのか?」
「ええーあーうん。色々と」
「緑川どうだった?」
「うん。まあ…全然変わってなかったよ」
「だろうな」
「あと左手につっこまれた」

なんのことだ?と左手を見た。そしてああ、と頷く。中学二年生からずっと薬指にはめ続けている指輪。
中学二年生のときのホワイトデーのときに風丸に贈った指輪。ずっと一緒に居ようという約束とともに贈ったわけだが…今でもその約束は守られ続けている。現にこうやって同居しているのだから。

「えへへ、円堂大好き」

風丸は甘い声でそう言うと俺の首に己の腕をからませた。らしからぬ行動に俺は顔を真っ赤にさせて硬直する。風丸は酔うといつもこんな風に甘えてくるから心臓に悪い。「お、俺も大好きだからその…離してくれ」と風丸の肩を掴む。「やだ」そう言って風丸はより身体を密着させた。本当に心臓に悪い。あ、酒くさ。

「なあなあえんどー、俺のことどのくらい好き?」
「えっ…言葉に表すことができないくらい」
「あはは、円堂ちゅーして」

俺は何も言うことが出来なくなった。風丸は勝ち誇ったような目をして俺を見つめている。俺は風丸に勝つことがどうも出来ないようだ。俺は負けて風丸のやわらかい唇に自分の唇をあてた。そして離すと風丸はふわりと笑う。

「俺さ、いつもは素直じゃないからこうやって甘えたりできねーけどさ…酔うとこうやっておねだりできるから…俺うれしーんだ…」

そうしてにへらとゆるい笑顔を見せた。ああ、こいつって本当、昔から何も変わってない。こうして髪が長くなってても、ちょっとだけ顔つきが大人っぽくなってても。
「おやすみ」一定のリズムで寝息を立てている風丸にひっそりと呟いた。



「なあ円堂…頭がガンガンするんだが」
「二日酔いだろ?」
「もしかして俺昨日…とんでもないことした?」
「いや別に?ただちゅーしてとか言ってき「死にたい」

風丸は頭を抱えてまたベッドにダイブした。
そういうところも可愛い風丸は、これからも俺の隣に居続けてくれるようだ。




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