かちゃり。
静かな部屋に食器の重なる音が響いた。風丸はひとつ、静かに溜め息をついた。
時計を横目で見るとすでに12時を過ぎていることに驚いた。まあ先程起きたばかりだからしょうがない。休みの日はどうしても遅めの起床となってしまう。悪い癖のようなものだ。
今日の昼ご飯はどうしよう、と思考を巡らす。簡単に何か作ろうにも食材があるかわからない。もし食材が無かったらこの前壊れた傘も買いに行こう。そして冷蔵庫に手をのばした瞬間、間抜けチャイムが鳴った。

「…誰だ?」

のばした手を引っ込め、小走りで玄関へと向かう。特に通販やらを頼んだ覚えも無いし…マンションの大家さんか?風丸はこのとき、訪問者が誰であるか全く予想ができていなかった。
重々しい鍵を手でがちゃりと音を立てて開けるとドアを開けた。

「よっ!」

目の前に居たのは、オレンジのバンダナを巻いて、スポーツマンらしいジャージを来ている男性だった。その男性は片手を上げ、フランクに挨拶をしてきた。
もちろん見覚えがある。太陽のような笑顔、少しのびたチョコレート色の髪、そして大きな黒い目。あの頃から、あまり変わってない。「…円堂?」

昔、好きだった男がそこに居た。
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