梅雨の次期がきた。
そう思ったのは6月のなかごろの、早朝。窓の外で降り続いている雨に、円堂は大きな溜息をついた。
この時期はどうも苦手だ。なんてったってサッカーができない。それにジメジメしているし、雨で濡れてしまう。
そんなどうでもいいことを頭に思い浮かべながら、ベッドから這い上がる。
このとき、円堂はこの梅雨のある日に、まさかあのようなことが起こるとは思ってはいなかった。



俺は傘をさしながら雷門高校へ登校し始める。まだ少し早い時間だからか、登校する生徒らは少ない。
玄関を通ると下駄箱がある。円堂は雫で少し濡れてしまった靴を下駄箱にしまった瞬間、なにやら奥の廊下から足音が聞こえた。そちらの方向を振り向くと、同じ中学校だった半田が駆け寄ってくるのが見えた。

「円堂円堂ー!」
「半田、おはよう!」
「おはよ…ってそうじゃなくて!ビッグニュースだ!」



円堂は無我夢中で走り出していた。向かう先は自分のクラス。あいつのことだから、きっと早めに登校しているに違いない。鞄の重さも気にせず、ただただ走り抜けた。
教室に着くと、様々な生徒に囲まれている風丸が見えた。

「風丸!」
「…えんど、」

風丸は目を見開いておどろいた表情を見せたが、なりふり構わず円堂は風丸の細い華奢な腕をつかんだ。「ちょっとこい」そう言うと風丸は黙ったまま目を伏せてしまった。



「どういうことなんだ?」

二人が来たのは特別教室。ここは特定の教科の時だけ使う教室で、普段は誰も使っていない。風丸は神妙な面持ちで口を開いた。

「どうもこうも、噂通りだよ」
「納得いかねーんだよ」

はあ、と小さな溜息を吐いた。その姿さえも美しくて、円堂は生つばを飲み込んだ。

「俺と塔内は、付き合っている」

頭が真っ白になる。聞きたくなかった、ことば。
半田はこう言った。『うわさだけど、風丸彼女できたらしいぜ!』
うわさだって、信じたかった。胸の鼓動が、速まる。

「…なんでだ?」
「俺は、自分が嫌いだ」

そう前置きをして、風丸は次のように言った。
自分から別れを告げたのにも関わらず、未だに円堂のことが好きな自分が大嫌いだったらしい。風丸はそんな自分を変えるために、告白を承諾した、らしい。

「うそ、だろ…風丸?」
「うそじゃないんだ。すまない」

円堂はその場にいるのが堪えられなくなって、気がついたらその場を走り去っていた。
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