「夏祭り?」
「そう!毎年夏祭りがあるんだ。ヒロト一緒に行こうよ」
「う、うん!行くよ」

エイリア学園から少し歩いたところで毎年開催される夏祭り。大勢の人々が訪れ、賑わっている。ヒロトもお祭りごとは好きなのか、嬉しそうな顔をした。
その夏祭りは今週の日曜日に行われる。俺も楽しみで胸を弾ませていた。



―のはずだったのに。

「なんでこうなっちまうんだよ〜…」

片手に携帯電話を握り締め、俺は自動販売機に寄りかかった。
何故こうなってしまったか。俺はヒロトと夏祭りに来て、楽しんでいた。ここまでは良かったのだが、神輿が通る際に人波にのまれ、はぐれてしまった。それから20分、電話もつながらず、こうしてとぼとぼ歩いているのだった。
このままヒロトに会えなかったらどうしよう…と、泣きそうにもなる。視界が滲む。俺はとっさに手の甲で目をこする。

「緑川!」

そのとき。遠くで俺の名前を呼んだ気がした。思わず人波に飛び込んだ。人波を手でかきわける。だんだんと声が近付いていく。そして視界に鮮やかな赤が映った。

「ヒロト!」

彼の名前を呼ぶと、右手が誰かの手によって掴まれた。ぎょっとして、掴む手を辿り、顔を見た。一番会いたい、顔だった。



「いや〜本当にごめんね。よそ見してたら緑川が立ち止まってるの気付かなくて」

そう言ってヒロトは苦笑いした。俺も悪かったと、素直に謝る。
とりあえず露店から離れた神社でりんご飴を食べながら休憩している。お互い謝ると無言になり、沈黙が訪れた。なんだか気まずい雰囲気になり、黙ってりんご飴をなめる。
「実はさ」ヒロトは口を開いた。

「もう気づいてると思うけど、俺宇宙人じゃないんだよ」
「…え!?!??」
「あれ?気づいてなかった?」
「…うん」

するとヒロトは大声を上げて笑いだした。「そっそんなに笑うことないだろ!?」「ごめんごめん」ヒロトは笑いすぎて出てきた涙を手ですくった。

「実はさ、俺最初緑川のこと女だと思ったんだよね。で、下見に来たときに可愛いなって思ってさ」
「…はあ?!」
「まあ親しくなりたいなあと思って…そしたら男だって知ったんだ。でもいっか、って思って宇宙人って嘘でもついたら興味持ってもらえると思ったんだ」
「…そりゃ持ったけど…」
「もちろんすぐ嘘だって言おうとしたよ。でも話すうちにどんどん好きになっちゃって、嘘だって言ったら興味もなくなるかなって思ったら言えなくなったんだ。ごめんね」
「ちょっ…待って待って待って!」

今の話を整理するとつまり「ヒロトは俺のこと…好きなの?」「うん」あっさりとヒロトは肯定した。顔がどんどん熱くなるのがわかる。対してヒロトは余裕たっぷりの顔で俺に接近した。思わずのけぞった。

「ねえ、緑川は俺のこと好き?」

まるで世界にふたりだけのような感覚に陥った。
そんな答え、本当は前からわかりきっていた。

あのとき、ヒロトと出会った夏の日からずっと、
隕石のように突然現れた君のことが―

たった二文字の言葉を、君に贈る。
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