「おかしい、こんなの絶対おかしいよ…」
俺が項垂れているとヒロトはにこにこと笑って俺の頭を撫でる。
なぜ俺は項垂れているのか、それは数十分前に遡る。
「晴矢晴矢!あのね、部屋に変な赤髪のやつが」
「はあ?赤髪な変なやつ?」
「そう!不審者だよ、晴矢!」
「それって後ろにいるやつのことか?」
ハッ、と後ろを振り向くと、何時の間にかヒロトがいた。
突然宇宙人と名乗ったこの基山ヒロト。この脳で考え出した結論は、不審者でないか?ということ。だとしたら誰かに報告…いや、通報したほうがいい。そう思って部屋から出ると晴矢がいたので声をかけた次第だ。
「ぷっ、あはは!そいつは不審者じゃねーだろ?このお日さま園に住むひとりだろ?」
「え…?」
「忘れちまったのか?ヒロトだろ?基山ヒロト」
「君はその…自称だけど宇宙人なんだろ?なんで晴矢がお前のこと知ってるんだよ」
第一俺はこのお日さま園に昔からいる。けれども、この基山ヒロトというやつは見たことがない。晴矢もこのお日さま園に昔からいるのに、なんでヒロトのこと知ってるんだ。俺だけが知らないのか?まさか。
「あーそれは簡単だよ。記憶操作させてもらったのさ」
「記憶操作?」
「そう、俺は昔からこのお日さま園にいるっていう記憶をみんなに植え付けたのさ。その方が好都合だからね」
意味がわからない。宇宙人は記憶操作とかそんな大層な能力も持っているのか?甚だ疑問だ。
もし本当だとしたら、なぜ俺はその記憶がないんだ?
「あっ、それはねえ、一人くらい協力者がいた方が良いからだよ」
「か、勝手に心の声を読むな!」
そんな訳で、このお日さま園でヒロトが宇宙人だということを知っているのは俺だけらしい。
「ああ、それとこれからこのお日さま園に住むから」
「うえっ!?」
「そんでもって、同じ部屋」
ヒロトはとても美しい笑顔で、「よろしくね」と言う。俺は、平和な日常が音を立てて崩れていくのが聞こえた。
こうして、奇妙な同居生活(?)が始まったのであった。