彼はまるで隕石みたいだ。
なんの前触れも無く襲ってくる。
あの日もそう、何事も無い平和な夏の日だった。
「…暇だ…」
俺は窓を全開にして、青空を眺めていた。容赦ない陽射しとセミの鳴き声が俺を夏気分にさせる。普段なら暑いだのうるさいだの文句をたれるが、今はただただ時間を持て余してるだけで、文句をたれる気力も無い。ここまで暇だと何か事件でも何でも起きないかと不吉なことを考えてしまう。
ゆっくり、亀のようなスピードで流れる雲を観察していると、突如視界が赤色と肌色で満たされた。
「…?」
暑さで思考回路が破壊されたのか、俺はすぐに状況を理解することができなかった。鮮やかな赤色が揺れた。
「君、緑川くんでしょ?」
「…そうだけど」
「驚かないんだ?」
「…」
どうやらこの赤色は人間のようだ。よくよくみれば俺と同い年ぐらいの少年だった。
そこで、俺の脳はじわじわと冷静さを取り戻していく。同時に疑問が浮かび上がる。
こいつ、誰?
「…っうわあ!だ、誰だよお前!」
赤色の少年が現れてからもう何十秒も経ったのちに、ようやく俺は反応した。赤色の少年は目をまるくさせたあと、上品にくすくすと笑った。
「君、面白いね」
そう言って柔らかい笑顔を浮かべた少年。彼の鮮やかな赤色の髪が爽やかな青空に映えて、きらきらと光っているみたいだった。俺は思わず目を細めた。
「俺、基山ヒロト。宇宙人だよ」
柔らかい笑顔を携えたまま、基山ヒロトと名乗る少年はとんでもないことを言い放った。
「…宇宙人?」
ある夏の日の昼下がり、
宇宙人が、襲来しました。